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ヒトコワ

ねこきちさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

中古物件の内見にて
短編 2025/01/14 15:05 456view
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昨年、会社の同僚である山田(仮名)が念願のマイホームを手に入れたので思い出した話。
山田家は子無しの夫婦で賃貸マンション暮らしだったんだけど、そろそろ一軒家に住みたいよねってことで2年前から中古物件探しをしてたんだ。

ある日奥さんがSUUM〇で良さげな物件を見つけて、不動産屋に連絡して週末に内見の申し込みをした。当初は夫婦揃って行くつもりだったんだけど、山田は申し込みの後でその日に別の用事があることに気づいて、仕方なく奥さんだけで行くことになった。
内見の前日に不動産屋の担当者から内見の最終確認の電話が来たんだけど、奥さんはその時に「夫が急用ができてしまったので私一人で行きます」的なことを伝えたんだって。
その担当者は以前にも何度か山田夫妻に物件の紹介をしたりして顔馴染みだったそうなんだけど、「分かりました、残念ですね~」的な当たり障りのない返事が返ってきたそうだ。

で、内見当日。13:30に物件の前で待ち合わせだったんだが、奥さんは急な発熱で起き上がるのもフラフラって状態になってしまった。一方で山田の方は一日かかる予定だった用事が午前中に済んだので、予定とは逆に奥さんは留守番をして山田一人で内見に行くこととなった。
13:30ギリギリに物件の前に到着したんだけど、担当者はまだ来ていない。5分待っても来ないから、もしかして中にいるのかな?と思って玄関のドアに手をかけたが鍵がかかっている。
それから更に5分経っても担当者が来ないものだから、担当者の携帯宛に電話をかけたが留守番電話になってしまう。もしかして奥さんか担当者のどちらかが日時を間違えたのかな?と思い、山田は不動産屋の事務所に電話をかけた。

「今日の13:30からおたくの〇〇さんに内見を申し込んでるんですけど、〇〇さんが現地に来てなくて」って山田が伝えると先方の課長さんが電話に出て「〇〇はだいぶ前にそちらに向かっているはずですが、おかしいですね」って言った後、申し訳ございません、今から私がそちらに伺います、20分ほどで到着しますのでと謝罪されたので、山田は待つことにした。

20分弱で到着した課長さんは平謝りで、ポストの奥から鍵を取り出し玄関を開けた。山田は課長さんの案内で一階から見ていったんだけど、SUUM〇の写真通り築年数の割には奇麗で好感触だったようだ。
風呂場やリビングを見て回って、じゃあ上も見ましょうかってことで階段を上って二階の寝室のドアを開けた途端、二人は絶叫した。部屋のど真ん中に、〇〇さんがぶら下がってたんだって。
その寝室には太い梁のようなものが渡っていて、部屋干し用に物干し竿なんかが渡せるフックが付いていたそうなんだけど、その梁にロープを引っかけて、〇〇さん首吊り自殺してたんだ。足下には自殺に使ったであろう踏み台代わりのスーツケースが転がってた。
まぁその後は山田と課長さんの二人で〇〇さん身体を下ろしたり、警察とか病院に電話したりで当然内見どころじゃなかった。救急車が到着して〇〇を運んで行ったけど、結局病院で死亡が確認されたそうだ。勿論そんな家には住めないってことで、山田夫妻は別の不動産屋を頼って昨年末に無事家を買った。

当時この話を聞いたとき、その担当者仕事のストレスとかで追い詰められてたんかなって山田に言ったんだ。そうしたら山田は少し言いよどんだ後で、「〇〇はかみさんを道連れにしようとしてたんだと思う」って言った。
警察の調べで、梁にかけたのとは別の輪っかが作られたロープが、スーツケースの中から見つかったんだって。あと、〇〇が亡くなった寝室は出窓が付いてたんだけど、その出窓からはちょうど玄関が見下ろせたんだそうだ。で、どの部屋も雨戸が閉まっていたのに、その出窓だけ雨戸が開いてたんだって。

「〇〇はかみさんじゃなくて俺が玄関にいるのを見て、独りで逝くことにしたんじゃないかな」山田は呟くように、そう言った。

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