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心霊

きのこさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

抜けてはいけないトンネル
長編 2024/12/19 09:30 425view

 私の地元には、今は使われていない古いトンネルがある。

 数年前までは使われていたが、わざわざ隣に大きなトンネルができたので、お役御免おやくごめんとなった。
 近所の人達は、
 「人口700人程しかいない田舎の小さな町に、新しいトンネルをつくるなんて」と首を傾かしげていた。

 たしかに、たとえトンネルが通行止めになっても、別の場所に広い道路があるので、住んでいる人達は別に困らない。

 ただ、私には思い当たる節があった。
 それは、事故の多さだ。

 トンネルを東から、西へ抜けると広い川へ出るのだが、その川へ車が突っ込むという事故が相次いでいた。そのトンネルを通るのは地元の人達くらいなので、もちろん抜けた先に川があるのは皆分かっているはずだ。それなのに、なぜ落ちるのだろう? と私も不思議に思っていた。

 トンネルを西から東へ抜ける時は、事故は起こらない。

 でも、東から西へ抜けると、事故が起こる。

 もちろん対策はされていた。出口に看板をつけたり、夜間の照明とミラーもあるので、夜でも出口だと分かるはずだ。それでも事故は減らなかった。

 川に落ちたことがある、という親戚に話を聞くと、

「出口から出たのが、分からなかった」と言う。

 私も親の運転する車で夜に通ったことはあるが、ライトが看板やミラーに反射していたし、照明で明るくしてあったので、私でも出口だと分かった。

 なぜ親戚が、出口が分からずに川へ突っ込んだのか、その時は理解できなかった。

 中学校3年生のある日。通学のためにバスに乗ろうとすると、いつもは自転車通学の先輩2人が、バス停にやってきた。

 何だか2人が落ち込んでいるように見えたので、

「どうしたんですか? バスに乗るの、珍しいですね」

 と尋たずねてみた。

 すると、先輩達は一度顔を見合わせてから、青い顔をして、

「古い方のトンネルには行くなよ」

 と呟つぶやいた。

 そして、そのまま俯うつむいてしまった。

 あまり言いたくないんだろうなとは思ったが、気になったので詳しく訊いてみると、部活帰りの真っ暗な中、先輩達はふざけて古い方のトンネルを抜けたらしい。

 ——東から西へ。

 そして、トンネルの中間辺りで女の声が聞こえて怖くなり、急いで抜けようとしたら、そのまま川へ落ちたらしい。
 
 道路から川へはそれほど高くないので、目立った怪我はなかった。それでも先輩達の顔を見れば、話が嘘ではない事と、どれほどの恐怖を味わったかは想像できる。

 ただ『声が聞こえた気がする』程度では、人間は引きつった顔をして、唇を震わせたりはしない。握りしめられた拳は力を入れすぎて、白くなっていた。

 先輩達は、よほどはっきりと女の声を聞いたんだろう。

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