懐中電灯貸して
投稿者:イノ (2)
これは私の母から聞いた話です。
母が小学生だった頃、地元の地区ではお盆時期に決まって墓地で肝試しをしていたそうです。
みなで隊列を組み、1列になって墓地の中を縫うように歩き回るというもので、いつも母は抜け出せない迷路にいるようで怖かったと語っています。
その年の肝試しで、母は隊列の後方に回り、前に長く続く隊列について行っていました。
すると不意に肩を叩かれ、続けて「ごめん、落し物したから懐中電灯貸してくれない?」という女の子の声が聞こえたそうで、懐中電灯を持っていなかった母は懐中電灯を持っている少し前の人から借りて、その子に渡したそうです。
肝試しが終わり、あの子が最後まで戻らなかった事を気にしていた母に、懐中電灯を渡してくれた先輩が声をかけてきました。
先輩
「君、懐中電灯は?」
母
「後ろの子が落し物したみたいで、懐中電灯貸したんですけど、その子戻ってこないんです。」
先輩
「え……君1番後ろじゃなかった?」
先輩の言葉に母はハッとしたそうです。
確かに初めの時は自分の後ろに並ぶ数人が見えていたのに、肝試し中は足音が聞こえてこなかったこと。
落し物をしてさぞ焦っているだろうにも関わらず、足音1つ立てずにどこかへ行った女の子。
女の子を含めた自分の後ろに並んだ子達の顔を何故か思い出せないこと。
全てが腑に落ち、怖いよりもなるほどなという気持ちだったそうです。
結局その日は懐中電灯は見つからず、翌日の昼間に母、先輩、そのほかの有志のメンバーで懐中電灯を創作した所、無事見つかったそうです。
自分とは全く関わりのない、知らない人のお墓の上に、電池が切れた状態で。
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