海から来たもの
投稿者:篠月夜々 (2)
これは約15年ほど前、私が高校1年生になったばかりの頃の話です。
その日はいつものように朝食を食べながら、リビングで母と談笑していました。
朝食も食べ終わり、あと数分で登校しなければいけない時間になる頃…ふと、周りから磯のような匂いがすることに気づきました。なんというか、本当に海の側を通ったときのような匂いがするのです。
はじめは母が魚でも焼いているのだろうと思っていましたが、キッチンにいる母の姿を見ると自分の分の卵焼きを焼いていて、魚など焼いていません。
不審に思った私は試しに
「ねぇお母さん、なんか海みたいな匂いがしない?」と母に尋ねてみました。
しかし母は「そう?」と不思議そうにするばかり。でも、確かに海岸沿いで嗅ぐような匂いがするのです。
ただ、このままでは学校に遅刻してしまうと思い、海の匂いが気になるけれど、とりあえずカバンを持ってテーブルを立とうとしたその時…
「うわあああああ!!!」
私は見てしまいました。私が座っていた席の斜め後ろのところに、海の匂いを放っていたであろう匂いの主がいたのです。
それは異様に背が高く、髪がボサボサに伸びきり、青白い肌をして…わかめなどの海藻や貝殻にまみれた、びしょ濡れで、目が赤く充血した女性でした。
真っ赤に充血した目で、私を見つめていたのです。
「お母さん!!私もう行くね!!」
目の前の女性に怯え戸惑いながら、私はとにかく慌ててカバンを掴んで飛び出し、自転車に乗り込みました。
そこから一目散に自転車をこぐこと数分。
「自転車に乗ったから大丈夫」と安心しようとしていましたが…そんなわけはありませんでした。
必死で猛スピードでこいでいるにもかかわらず、なぜか自転車がとても重いので、右肩に視線を向けると…
さっきリビングで見かけた女性が私の肩をつかみ、下半身は風に吹かれ、赤い目でこちらを見つめながら、ガッシリとしがみついていました。まるでこいのぼりのように浮いているのに、とても重く強い力で捕まっているのです。
その姿にものすごく背筋が凍りつきました。
それでも、ようやく憧れていた高校生活が始まるのに…このまま校門を通れないのも悔しいので、右肩にいる女性の存在に怯えながら、とにかく心の中で
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