ある日、お気に入りのカフェで…
投稿者:太山みせる (35)
綾乃はその日、お気に入りのカフェで仕事をしていた
店内は自分の他に客が三組しかいなかった
テーブル席に1人で座り、コーヒーを飲みながらノートパソコンで打ち込みをしていると、新たに一組の男女が入って来た
柄の悪い男と、派手な格好をした女だった
2人は綾乃の近くの席に座った
男はとても粗暴で、座り方も店員への態度も悪かった
綾乃は気にせず仕事をしていたが、しばらくすると2人はこちらをチラチラ見てくるようになった
ヒソヒソ話もしている
面倒事に巻き込まれたくないので無視していたら、男が立ち上がりこちらへ向かってきた
(なんなの?)
思わず身構える
だが男は綾乃をチラリと見ただけで、そのまま通り過ぎて店を出て行った
店内の大きな窓から、外の駐車場が見える
男はそこに停めてあったゴツい車に乗った
ホッとした綾乃に、今度は女が立ち上がりこちらへやってきた
女も店を出るのかと思ったら、何と綾乃のテーブルの向かい席に座った
「えっ!」
知らない人が自分の対面席に勝手に座ったのだ、そりゃ驚くだろう
綾乃は絶句した
女は唐突に、
「済みませんが、ちょっと一緒に来て下さい」
と言った
「……どこへですか?」
「外に車があるので、そこまで来て下さい」
何を言っているのだ?この人は?
「知らない人の所に行く訳ないでしょ」
綾乃は毅然として答えた
行ったら車に乗せられて、連れ去られてしまうかも知れない
「それでは困るんです、その…お願いします」
女は思ったよりも気弱だった
派手な格好も男の好みでそういているのかなと思った
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