ある日、お気に入りのカフェで…
投稿者:太山みせる (32)
「何で困るんですか?」
「あの…、あなたを連れてくるように言われて…。だから来てくれないと困るんです」
それでホイホイついて行くと思っているのだろうか?
綾乃は大人しめの美人で、服装も化粧もシンプルだ
痩せていて一見かよわそうに見えるが、実はとても気が強いのだ
職業も高校の体育教師で、普段から授業や部活で厳しく生徒たちを指導している
(とにかくこの場はしっかりと断らねば!)
そう思った綾乃は行かないこと、もしこれ以上しつこくしたら警察に言うことを強い口調で伝えた
すると女は諦めたようで、立ち上がろうとした
しかし綾乃はその手を掴んだ
「えっ?」
今度は女が驚く番だった
「待ちなさい、まだ話は終わっていない」
女は手を振り払おうとしたが、綾乃の握力は男なみに強い
「私の話が終わるまで、逃さないわよ」
「……」
綾乃は女にどういう生き方をしているのか、人との付き合い方、やってはいけないこと等、様々なことで説教をした
女が口答えしたら、徹底的に論破して責めた
大学時代、ディベートで負けたことはない
そのうち女は泣き出した
「いいわね、しっかりと自分の意思を持って、流されないで生きていくのよ」
最後に教師らしくエールを送ってから解放した
女は泣きじゃくりながら店を出て行った
車は女を乗せると間もなく発車した
※
「大丈夫ですか?」
店員や他の客たちが、おずおずと訊いてきた
彼らは不穏な空気に気がついて、綾乃が連れて行かれそうになったら助けようと構えていたらしい
「大丈夫ですよ」
たっぷり余裕を持って応えた綾乃に、皆は格好良かったと口々に絶賛した
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