【short_02】アパートの赤子
投稿者:kana (210)
大学に入るのと同時に一人暮らしを始めた。
壁ドンすると隣の隣まで音が届くという例の系列の新築アパートだ。
引っ越しを終え、しばらくしてからの事だ。
寝ようとすると、隣から赤ちゃんの泣き声がする。
夜泣きと言う奴だ。
赤ちゃんは泣くものだ、というのは知っているし、赤ん坊に罪が無いのも知っている。
だが、こちらは眠れないストレスでイラだっていて、つい壁ドンをしてしまった。
しばらくすると赤子の声は泣き止んだ。
次の日の朝、ゴミ出ししていると隣の住人もドアから顔を出してきた。
昨日の一件もあり、ちょっと気まずいが挨拶した。
が、ここで少し不審なことに気が付いた。
隣の住人も専門学校生でボクより若く見えるくらいの子で、
とても赤ん坊がいるようには見えない。
不躾に質問してみたのだが、やはり彼も一人暮らしで赤ん坊など知らないという。
その日の夜・・・ベッドに入るとやはりまた赤ん坊の泣き声がした。
幸い隣の彼はまだ起きているようだったので、思い切ってベルを鳴らして隣りへ凸してみた。
だが、静かに勉強していたミニマリスト風な彼の部屋では、赤ん坊の声は聞こえない。
この状況を信じられないボクは、思わず彼を自室に呼んで上がらせた。
「た、確かに赤ん坊の泣き声が聞こえますね・・・」「だろ??」
「このアパート、壁が薄くて音が響くから、どこか別の部屋に赤ちゃんがいるのかもしれないですね」隣の住人の推理にボクも相槌を打った。
翌日不動産会社に電話して、赤ちゃんの夜泣きの件で一応抗議してみた。
するとこんなことを言ってきた。
「あの~、すいませんが、あのアパートは新築なもんで、
今、入居されているのは、まだあなただけなんですよ・・・」
ボクはすぐに引っ越しの準備に入った。
正直、怖くはないかも知れませんが、でもストーリー展開としては大変面白かったです。次回作も期待してお待ちしています。
まさか隣の彼も・・・ゾッとしました。