押入れの腕
投稿者:綿貫 一 (31)
幼い頃の記憶――。
夏休みになると、山形にある親戚の家に泊まりにいくのが僕ら家族の恒例行事だった。
親戚の家にはK君という歳の近い子どもがいて、僕と3歳下の僕の妹は、よく彼と一緒に遊んだものだった。
幼い僕ら兄妹にとって、ふだん接することのない田舎の大自然は、新鮮で興味の尽きない広大な遊び場だった。
深い森。
清らかな小川。
どこまでも広がる田園。
夏の強い日差しを身体いっぱいに浴びて、僕ら3人は真っ黒に日焼けしながら遊び回った。
虫取りが上手くて、秘密基地の作り方が上手で、木登りが得意なK君。
僕はK君のことを本当の兄弟のように感じていたし、毎年彼に逢うことが楽しみだった。
妹もK君のことが大好きだった。
幼い頃のまぶしい記憶――。
§
その日は朝から雨が降っていた。
大人たちは車で買い物に出かけるから、子供たちだけで遊んでいなさいと言った。
外に遊びに行けないから、僕らは家の中でかくれんぼをして遊ぶことにした。
K君の家は古い日本家屋で、とても広かった。
襖のむこうにいくつも部屋があり、隠れる場所が豊富でスリリングだった。
当然この家に住んでいて隠れやすい場所を知っているK君に有利な条件ではあったが、僕ら兄妹も、子供ならではの感性を発揮して見つかりづらい場所を探すのだった。
何度目かの番で、K君が鬼になった。
僕と妹は一緒になって隠れる場所を探した。
縁の下。
掘りごたつの足元。
束ねてあるカーテンの中。
前に一度隠れたことのある場所はすでに安全ではない。
K君の意表をつく、新しい隠れ場所はないものか。
「もーいーかい?」
「まーだだよー」
K君を使って何だったか探ろうとしたんですかね・・・?ガクガクブルブル