最後の夫婦写真
投稿者:rark (32)
「最後の夫婦写真」
「お前、マジむけん顔だってw」
「は?お前もむけんだろww」
別に気にする事はありません。陽キャグループの中では、意味のわからない言葉が流行るという、謎の風習があります。僕だってこの前、友達の1人に「むけん」というワードを出されて、意味が分からないという顔をすると、同じ陽キャグループの友達らにちゃかされたことはあります。
しかし僕が、
「お前ら。むけんってどういう意味で使ってんの?(笑)」
と聞いても、
「いや、俺もわからん(笑)多分、颯汰(仮名)が始めに言っとった気がする。」
という答えが帰ってくるだけ。そう。意味なんてどうでもいい。ただノリに乗る。それだけなんです。
まぁ、僕は「むけん」なんて言葉は使いませんが…。
先週の土曜日、例の陽キャグループの友達、金上颯汰(仮名)から相談を受けました。
「この写真なんやけど……」
颯汰が見せてきたのは、一枚の写真。そこには、2人の老夫婦のようなのですが、女性の方には、全体に黒いモヤがかかっていて、男性の方には顔だけに、黒いモヤがかかっています。
「これ、前に俺、じいちゃんが亡くなったって言ったやん?その時に、遺品整理しよる時に出てきたヤツなんやけど、これ、じいちゃんばあちゃんが写っとるやつなんよ。汚れとかじゃないし、なんか気味悪いんよ。」
金上颯汰はゆっくりと話し始めます。亡くなった、祖父のことについて……
「俺のじいちゃんさぁ。まぁとにかくキツい人で、俺なんか小さい頃、何回か殴られたりしとったわけ。で、ばあちゃんが生きてた頃は、特にばあちゃんへのあたりが強くて、ばあちゃんが死んでから、俺とか、親父へのあたりが強くなったわけよ。それに比べてばあちゃんは、俺の事可愛がってくれてたし、自分の息子、ああ、俺の親父ね。親父のことも、溺愛してたらしいんだよ。でも、俺が中坊の時かな。ばあちゃんが死んだ日、変な夢っていうか、まぁはっきりと覚えてるわけじゃないんやけど、夢の中にばあちゃんが出てきて、かなり嬉しくて、何話したかは覚えてないけど、結構楽しそうに話してたと思うよ。でも、最後にばあちゃんが、「私はむけんに行くからお前も来るんだよ。」って。そこだけは覚えてる。で、お焚き上げの日、遺骨を骨壷に入れるやつ。あるやろ?あれが、ばあちゃんの時はなかったんよ。で、次の日、俺が遺品の整理しよったらじいちゃんが俺のとこ来て、
「美奈子(颯汰の祖母の名前)がむけんに行ったのは、お前のせいや!!」
って言って、右手に持っていた酒の瓶を振りかぶって、近づいて来たわけ。そっからは取っ組み合いになったんやけど、まぁ中坊にもなって、70越えたジジイに負ける訳もなくその場はなんとか収まったわけ。
お前には、血の繋がった家族に、殺されそうになるっていう気持ちは、さすがに分からないだろうけどな……。そん時からかな?俺が本気でじいちゃんを嫌いになったのは……。」
颯汰は、ジュースを1口飲み、話を一段落させます。
「ああ、ごめんごめん。写真の話だったよな。お前、こういうの詳しいけん、なんか分かるかな?って思ってさ。」
颯汰は、無理やりな笑顔を浮かべながら、そう言います。しかし、これ以上は、あまり追求しない方がいいでしょう。しかし、そうは言われても、霊能力者でもあるまいし、いくらそういう話の類を知っているとしても、流石に写真を見ても分かるはずもありません。とりあえず、知り合いを通じて、そういう人脈には心当たりがあったので、一旦その写真を預かることにしました。
次の日、僕は部活のOBである木之本さんの人脈を借りて、木之本さん
の知り合いである霊能力者の人に直接会って、その写真を見せることに
しました。
「この写真は、あなたのご遺族ですか?」
僕「いえ、友達に頼まれて……」
面白かった。でも、なぜおばあさんはソウタ君を道連れにしようとしたのか、、、?
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「なぜおばあさんはソウタ君を道連れにしようとしたのか、、、?」
それは話しの中では【愛という呪い】として書かれてますよ。憎しみでも恨みでもなく只単に愛おしいから連れていきたいってことなんじゃないですかね。