妹が高校生のときの話です。
彼女が通っていたのは女子高でした。
ひとクラス30〜40人ほどで、その中で5人から8人のグループができていました。
特にグループ同士、険悪な仲というわけではありません。
グループ内の友達とは深く付き合い、それ以外の子とは、
さらっと当たり障りなく付き合う、そんな感じだったようです。
ただ、頻繁に別グループの子と話したり、遊びに行ったりと、
あまり親しくし過ぎたりすると、ちくりと嫌味を言われたりするそうで……。
妹は性格上『面倒くさいな』と、思っていたそうですが、
楽しい高校生活を滞りなく送るためには、要領の良さも必要です。
とりあえず、ひとつのグループに所属して、
目をつけられない程度に、よそのグループの子とも交流していました。
そんな高校生活2年目の夏休み明けに、妹のクラスに転校生が入ってきました。
ショートヘアで色白、小柄で地味な顔立ちの女の子です。
「山本、里緒(りお、仮名)です……よろしくお願いします」
緊張しているのか、簡潔に名前だけをいう自己紹介をして、ぺこりと頭を下げました。
クラスメイトたちが拍手する中、妹はみぞおちがヒヤリとする感覚を覚えていました。
(この子……なんか憑いてる?)
転校生と重なるようにぼんやりとした人影が、彼女と同じ動きをしていたのです。
でも、誰も『それ』に反応しません。
『それ』が見えているのは、その教室の中で、妹だけだからです。
妹は人には見えない不思議なものを見たり感じたりする『霊感体質』です。
転校生をどこのグループに引き入れるのか?
休み時間にさっそく山本さんに、それぞれのグループの代表格が話しかけているのを、
遠巻きに見ながら、妹は『私のところに来てほしくないな』、と思っていました。
彼女には悪いけど、ちょっとアレはなあ、と。
翌日には、山本さんは妹とは別のグループに組み込まれるような雰囲気になり、
席も離れてるし、ひと安心、と胸を撫で下ろしました。
しかし、数日後、山本さんは別のグループに混じって弁当を食べていました。
おや? と思っていると、また数日後には別のグループと行動を共にするようになり……。
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