3歳年下の妹が高校二年生のときの話です。
定期試験の最中で、期間中は早く帰れるので、その日も昼ぐらいには帰宅しました。
父と姉は仕事、当時私は地方の大学に行っていたので家にいませんでしたし、
母もその日は外出して留守にしていました。
次の日は試験最終日、科目は妹の得意なものばかりで、
ちょっとくらいノンビリしてもいいや、と
コンビニで買ってきたお昼を食べ、リビングで寝転がってテレビを観ていました。
そのうち、連日夜遅くまで試験勉強していたためか、ウトウトと転寝したのです。
ふと目覚めると、体が動かず、金縛りにかかっていました。
『霊感体質』の妹は慣れっこになっていて、面倒くさいな、と思ったそうです。
気配を感じたのでそちらを見ると、リビングとダイニングの境目に木製の珠暖簾がかけてあったのですが、
その向こうに、詰襟の学生服を着た少年が立っていました。
その少年の周囲は妙に薄暗く、ちょうど顔の位置に暖簾があったので相手の顔はわかりません。
妹は目だけは動かせたので、そちらを睨みながら『あんた誰よ?』と心の中で一喝しました。
すると、珠暖簾の一本だけが揺れ始め、その振り幅がどんどん大きくなっていきます。
ほとんど90度の角度まで大きくなり、『なにやってんの、こいつ?』と妹が思っていると、
どこからともなく中年女性の声で、
「タダヨシ、やめなさい!」
と、嗜めるような声が聞こえました。
途端に、少年が怯んだように身じろぎしたかと思うと姿を消し、妹も体を動かせるようになりました。
揺れていた珠暖簾も、ゆっくりと止まったそうです。
なんだったんだろうな、と思いつつ、揺れていた珠暖簾を一本弾いてみると、必ず他の暖簾にぶつかるのです
何度やっても、さっきのように一本だけ、それもあんなに大きく揺らすのは不可能でした。
さすが、向こうの人は不思議なことができるもんだわ、と妹は感心したそうです。
それに、中年女性の声にも、タダヨシという名前にも聞き覚えがありませんでした。
「で、その後、どうしたんだよ?」
私が訊くと、
「勉強したよ、フツーに」
と妹は答えました。


























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