誰にも渡さない部屋
投稿者:YoyoYoyoY (52)
ほんの少しだけ霊感がある私は、自称ちょい能力者と名乗っています。
ちょい能力とは、ちょっとだけ霊感があるという意味で付けました。
普段は霊感のスイッチを切っていますが、友達に頼まれるとスイッチを入れて相談に乗ることもあります。
特によく依頼されるのが、賃貸物件の良し悪しです。
一度契約すると、それなりのお金も動く上、そうそう引っ越しなど出来ません。
だからか、友達が引っ越しを決めるときは、一緒に内覧に来て欲しいと言われることが多いのです。
それは、奈良県に住む友達からの依頼でした。
今住んでいる所が取り壊しになるので新しい賃貸物件を探していたところ、家賃、立地条件、部屋の間取りなど申し分ない物件を見つけたらしいのですが、どうも気になる、何かが引っ掛かると言うので、相談に乗ることにしました。
霊的な作用が強いかもしれないので、私はお守りに水晶とアメジストの付いたパワーストーンを付けて行きました。
あるお寺で買ったもので、強い力を持っていました。きっと何かの助けになるだろうと感じました。
早速、奈良県の友達の家に向かい、その日は泊まることにしました。
ネットで件の物件を見せてもらいましたが、特に事故物件との情報もなく、至って普通のマンションのようでした。
日当たりの良い部屋で、駅からも近く、値段は多少安めな設定ですが特に心理的瑕疵や、物理的瑕疵もなく何の問題もなさそうです。
どのへんが気になるのか、逆に興味がわいてきました。
「すごく良い物件だから、じっくり内覧をしたんだけど、何だかねえ」
友達はどうしても契約に踏み切れないようでした。不動産屋も、早々に決めてくれないと、すぐに借り手が付きますよとせかしているようです。
晩御飯を食べながら、話をしていると外は雨に変わっていました。
シトシトと静かな音を立てる雨音を聞いていると、ふと いたずら心に火が付きました。
「ちょっと、外からでも良いからその物件を見に行こうか?」と私は提案しました。
子供の頃からの友達なので、つい林間合宿の肝試しのような気分になったのだと思います。
二人とも、少しワクワクして部屋を出ました。さきほどより雨は強くなっていましたが、歩いて5分ほどの場所にある物件です。大したことはありませんでした。
友達の住んでいるマンションには、小さな非常階段が付いていました。3階だったので、エレベーターを待つより非常階段の方が便利でした。
私が先に階段を降りて行きました。雨は非常階段を水浸しにしていました。
私は水たまりを避けながら、ゆっくりと降りているつもりでした。
ところが、何の拍子もなく足を滑らせてしまったのです。
一瞬でした。
私は1階の地面まで、後頭部を打ち付けて滑り落ちました。
ガンガンガンという、大きな音が耳に響いていました。
痛いとか、怖いとか、思う時間もありませんでした。
鉄の階段なので、相当なケガが想定できました。
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