大将、例のやつを一つ
投稿者:ねこじろう (147)
「絶品なんすよ」
白いワイシャツにショッキングピンクのネクタイをしめた今泉が、中ジョッキの生ビールを片手にしゃべり続けている。
それは金曜日のこと。
会社から歩いてすぐのところにある居酒屋の片隅で、俺と今泉は呑んでいた。
俺は今年40歳になる外資系の保険会社に勤める会社員だ。
勤続は18年になる。
今泉は去年中途採用で入ってきた30歳の男だ。
時刻は午後8時。
店内は、会社帰りのサラリーマンや若い大学生たちで賑わっていた。
「絶品って、どういうふうに、絶品なんだよ?」
俺は目の前に置かれた小鉢に箸を突っ込み、少しピンク色に上気して口を尖らせた今泉の顔を見ながら尋ねる。
「いや、そう言われると困るんですけど、とにかく一度口に入れると旨みが口内にパッと広がって、そう何というか一瞬で脳ミソがとろけるんですよ。
癖になるというか中毒になるというか、、、僕なんか最近ほぼ一日ごとに通っているくらいで」
「中毒!?そりゃあまた、凄いね。だいたいそれは肉なの?」
「そうです、そうです肉なんです」
「何の?牛?豚?鶏?、、、それとも羊とか?」
「うーん、鶏や豚じゃないのは間違いないんだよなあ、、、そうすると、やっぱり牛なのかなあ」
「え?お前出されたものが何なのか、分からずに食ってるのか?」
「店のドアに牛の絵が描いてあるから、多分牛肉だと思うんですが、まあとにかく先輩も一度それを口に入れると、癖になりますって」
「ふーん、それでその店ここから近いのか?」
「ここからだと歩いて7、8分です 先輩今から行きます?」
「そうだな、お前の話を聞いていたら何だか俺もそれを食ってみたくなったよ」
そういうことで俺は後輩の今泉と一緒にその店に向かった。
居酒屋を出てから少し歩いてビルとビルの間から狭い路地に入り、入り組んだ迷路のような緩い坂道をグルグル歩き続ける。
すると忽然と赤い鳥居と小さな神社が見えてきて、その隣に古い雑居ビルが姿を見せた。
店は、そのビルの一階にあった。
ビルの入り口ドアを開けるとすぐ右手に年季の入った木の扉があり、扉の表面には太い黒マジックで安易な牛の絵が描かれており、真ん中には「肉」の一文字。
扉を開けると途端に楽しげな男女の声が溢れ、肉の焼ける香ばしい匂いが鼻孔を直撃した。
店内は結構賑わっているのだが何だか薄暗く、ところどころ赤や緑の電飾が鈍く灯っていて、東南アジアの怪しげな店のような雰囲気だ。
そんなに広くはなさそうで、奥の方に6人くらいが座れるカウンターがあり、あとは四人掛けのテーブルが三つほどあるだけだ。
大体途中から人肉なのかとわかったけどわかったけども…怖かった!笑笑
大将、タヒ刑すね。