強行遠足2年目の死 (加筆修正版)
投稿者:kana (210)
これはまだボクが高校生だったころのお話。
当時通っていた高校の名物ともいえる行事のひとつに「強行遠足」と言うものがありました。
札幌郊外の真駒内(まこまない)から支笏(しこつ)湖へ向かう33キロの峠道を走破する、なかなか過酷な遠足です。
支笏湖へ通じる道と言えば、怪談でもたびたび語られることのある例の道ですが、
もちろん当時はそんな事などつゆ知らず、ただひたすらに歩いておりました。
1年目の初参加の時、峠の途中のカーブでガードレールが破れている所を見つけ、
そこから下をのぞくと一台のクルマが谷底まで落ちていました。
クルマのテールランプがこっちを向いています。
崖下のクルマは既に錆も見られ、新規の事故とは見えなかったため、
たぶん乗っていた人はもうとっくに救助されたんだろうなと勝手に想像し、
そのまま強行遠足に戻りました。
陸上部の連中が2時間ちょっとでゴールしたのに対し、運動オンチなボクは6時間もかけてやっとゴール。
ヘトヘトになりながら帰宅したのでした。人生のなかで一番足の筋肉を使った日でした。
翌年2年目、またしても「強行遠足」の日が訪れました。
1年目にあった崖下のクルマのことを思い出し、その場所に差し掛かった時にまた崖下をのぞいて見てみました。
すると去年のクルマがまだ崖下にあったのです。
「えーー!?誰もあのクルマ回収しないんだ??」
そう思っていたら、近くにお巡りさんが来ていました。
たぶん今回の強行遠足のための警護とかなのでしょう。
そのお巡りさんに、崖下のクルマのことを言って案内すると、
にわかに無線機を取り出して本部に連絡をとりだしました。
…まさか今、はじめて警察に発見されたんじゃないだろーな?と、悪い予感。
だって、そうだとしたらあのクルマには、
まだ救助されていない人が乗っている事になるじゃないですか。
…本当ならここから先どうなるかをずっと見ていたかったのですが、
なんせボクの足では6時間もかかってしまう強行遠足。
ここでノンビリしていたら、日のあるうちにゴールできなくなってしまいます。
後のことは警察に任せてボクは強行遠足に戻ることにしました。
ところで今年はバイクで来てるやつがいます。元クラスメートのS君です。
彼は素行不良のドつっぱり。かなりアブナイと噂の男。
数週間前に退学となった元同級生です。
今は自由を手に入れて、ついでにちょっと改造した新しいバイクも手に入れて、
それを我々元同級生たちに見せびらかすため、バリバリとエンジンを吹かしながら
盛んに峠道を行ったり来たりしてボクらを煽っているのです。
いったい何が楽しいんだか…。
kamaです。ちなみにですがS君の乗っていたバイクは当時流行っていたスズキのガンマというやつで、かなり早いと噂のバイクでした。
あと、この事故のせいなのか、3年目の強行遠足は中止となりました。