おうちで介護
投稿者:件の首 (54)
結婚20年で、姑が倒れた。
姑は脳血管障害による半身麻痺、言語機能が障害されていた。
舅は既に亡く、多忙な夫や大学に通っている息子の手は借りず、私は1人で姑の面倒を見始めた。
「お義母さん、ごはんをどうぞ」
麻痺は右半身で、左利きだった姑は本来スプーンを使えた。
だが、私は決して自分でやらせない。
これだけで、筋力は低下し関節はどんどん拘縮していく。
「げほっ、げほっ……」
「あらあら、慌てないで下さいね」
刻んだ食べ物は一見食べやすそうだが、気道に落ちて肺炎を誘発する。
「しっかり食べないと元気になりませんよ」
料理内容は、きちんと夫から聞き出した、本当に姑が嫌いなもので揃えている。
姑は涙を流し、むせこみつつ呑み込んでいる。さもなければ、私が他の介護を何もしないからだ。
私は姑から、いわゆる嫁いびりを受けていた。
様々な仕打ちがあったが、何より。
最初の子を、「結婚前の子なんて恥ずかしい」という理由で堕胎させられた。気付かぬうちに中絶薬を盛られていたのだ。
全てがこの調子で、優しい言葉をかけつつ、姑が苦しむように介護を行った。
端から見れば、献身的に姑の世話をする嫁でしかない。
僅か半年で、姑は死んだ。
枕元に「置き忘れた」、使い捨て手袋を呑み込んで窒息したのだった。
夫と告別式の打ち合わせをしていると、息子がやって来た。
「お母さん。ちょっとタイミングは悪いんだけど」
「なに? 全然気にしないよ?」
「お葬式の後、婚約者、連れてきて良いかな? 多分、挨拶、今を逃すと間が空いちゃいそうでさ」
息子は照れ笑いを浮かべる。
……結婚? 私に一言の相談もなく?
「きっと気が合うよ。お母さんに、ちょっと似てるんだ」
子供なんか、出来てないでしょうね。
歴史は繰り返す。
今度は、自分がお嫁さんに・・・。
負の連鎖のくらい恐ろしいことはございませんね。