ある夜~墓地の道~○○に~でああった~
投稿者:もりのくまお (7)
昔私の勤務先の一つに、駅を降りてからハイキングなみに歩かなければ現地に着かない、
恐ろしく不便な店があった。ローカル線の小さな駅を降りてから徒歩30分。
昼は誰とも出会うことも無く、夜は街灯もない、真っ暗になるような道をとぼとぼと
歩くことになる。なんでこんなところを歩かなければならんのだと、毎日嫌な気分に
なったものだ。
駅前の道を県道沿いにしばらく歩き、パンを持って笑顔が不気味な子供の看板のパン屋
を右折すると、田んぼ道に入る。あんな気味の悪いガキが食べてるパンを、朝食に
摂ったら一日が大凶になるんじゃないかと思う。設置して何年になるんだ。描き直せ。
田んぼ道をしばらく行くと、もう車種もわからないような朽ち果てた小さな自動車が
「捨てて」ある。それが左折の目印だ。車の中を覗いてみたことがあるが、大量の
元はなんだったのかわからないようなゴミが大量に詰まっていた。この車のもとの
色は赤だったのか。ワィンレッドだったのか。今は茶色に変わっている。なんというか、
周りから浮いているような、邪悪で不吉な感じのする車だ。夜中に無人で走り出しそうな
気がする。
全体がサビに覆われた不吉な車を横目に左折すると、また田んぼ道が続く。遠くに
県道の街灯が見える。ぼんやりと、私の進む道を照らしているようだ。
たまに民家の横を通るが、人が住んでいる気配はない。明かりがついているようにも
見えるが、窓という窓に何かが貼ってあるためよくわからない。小さな庭のある家も
あったが、植えてある家庭菜園と思しき場所には元は何の野菜だったか
分からない枯れ葉てた植物の残骸が並んでいる。そして何よりも、家全体からカビと
いうか、何年も開けてないタンスを開けた時に漂うような、すえた匂いがする。
ような気がするだけかもしれない。
さらにしばらく歩くと、突然墓場が現れる。ゲゲゲの鬼太郎の鬼太郎のオープニングに
出てくるような墓場だ。妖怪が運動会をしているところは観たことはない。そして、
最後の難関が待っている。なんと、その墓場の中を歩くのだ。距離的には20mくらい
なのだが、実に怖かった。特にあの経験をしてからは。
その夜も勤務を終え、私は帰路に付いていた。周りは暗い。月明かりでやっと道が
わかるくらいだ。店から10分くらいで墓地ゾーンに入る。このゾーン入るときには、
私は必ず「愛をとりもどせ!」を心の中で歌う癖がついている。「You are shock!」と
歌いながら墓地をやりすごすのだ。声を出して歌っても誰も聞いてないだろうが、
お墓の中で安らかに眠る人々に迷惑をかけないようにという粋な配慮のためだ。
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