霊感が欲しいか?
投稿者:レイレサ (64)
これは、私の母が40年近く前に体験した不思議な出来事だ。
私の母はかなりの神経質だ。
人間関係で少し気になることがあるとずっと引きずっている。
引きずったまま段々と人を避けていく。
時としてその行動が誤解を生むこともあった。
近寄りがたい、何を考えているのか理解できない。
そういう陰口を叩かれることも多かったそうだ。
ある時に母は無実の罪で悪者にされてしまった。
母のせいではないのに、母が何か悪いことをしたという変な噂が流れていた時期があった。
その時の母は精神的に病んでしまい、うつ病になってしまった。
当時は心療内科もなければ、精神科へ行くところを知られたらどんな酷い噂話を流されるかわかったもんじゃない。
そのくらい差別と偏見が酷い時代だった。
かなり精神的に追い込まれてしまった母は逃げるように親戚の家に避難をした。
当時の私はなぜ母が居なくなったのか分からず、母に見捨てられたと悲観していたのを覚えている。
実際は叔母が母を県外の病院へ連れて行ってくれていたのだが、それを知ったのは後になってからだった。
その時の母はあまり記憶が残っておらず、断片的なものを繋ぎ合わせて当時の苦悩を語ってくれることはあったが、その時の体験の中でひとつ変わったものがあった。
親戚の家にお邪魔していた時、急に疲れが出てきた母は眠らせてもらった。
夢の中はゆらゆらと揺らめくような不思議な世界だった。
怖いと感じることはなかった。
目の前にはまばゆい光と共に仏様が現れた。
仏様は母にあることを提案してきた。
「霊感が欲しいなら授けよう」
母は一瞬欲しいと思った。
だが、あることを思い出した。
母が子供の頃に近所に不思議なおばあさんが住んでおり、その人がいつでも変わったことばかり言っていたのだ。
母を見る目が険しく、いつでも眉間に皺を寄せて母を見ていたそうだ。
そのおばあさんのことは苦手でいつでも顔を合わせるとそそくさと逃げていた。
そのうちそのおばあさんが病気で亡くなってしまった。
病死した後に霊感があって対面した相手の未来を霊視することが出来る霊能者であったと聞かされた。
あの苦手なおばあさんと同じ霊能力が手に入るのか、そう考えた母は仏様に「要りません」とお断りしてしまった。
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