行方不明になった友人の話
投稿者:七色 (4)
大学三年の秋頃、友人のAが行方不明になった話をしようと思う。
大学三年という事で就職活動が始まり、少し忙しくなった頃、当然ながら単位を落とさない為に出席日数を気にする学生が殆どだった。
そんな中、俺の友人のAだけはこんな時期にも趣味に生きているような奴で、出席日数に余裕がある講義は気軽に休んでいた。
Aの趣味は廃墟巡り。
と言っても、心霊とかの類ではない、普通に廃墟のノスタルジックな感じが好きだと常々語っていた。
で、スマホもそういった廃墟を撮影する為に性能の良い物に買い替えていて、講義の合間の
暇な時間とかに撮影したものを自慢げに見せつけられたものだ。
その中には、まるで秘境で撮った様な奇跡の一枚や、今昔の儚さを収めた哀愁漂う遺跡の様な一枚もあったので、俺も素直にその魅力に引き込まれる事もあった。
だが、中にはまるでホラー映画に出てきそうな手入れのされていない民家の外観画像や、内装を記録したものがあったりもする。
Aに聞けば、こういったあからさまな曰く付きっぽい廃墟には近寄らない様にしているそうだが、記念に外観の画像だけは撮影しているそうだ。
ただ、一度は事故物件に立ち入って寝泊まり検証してみたいとはよく話していた。
「この前少し離れた所を散歩してたらすっげえいい場所見つけてさ。たぶん、あそこ誰も住んでないと思うから今度行ってみるわ」
ある日、Aは喜色満面でそう言ってのけた。
以前から話していたように、隣家が無く、人の目が届かない絶好の穴場を見つけたようだった。
俺は「いや、住居侵入はマズいっしょ」と、Aが俺の忠告を聞く訳も無いと思いながらも一応は注意しておいた。
案の定、Aは「大丈夫、大丈夫」と頭は完全にその廃墟に行く事でいっぱいの面持ちだった。
それがAと話した最後になるとは、この時の俺は思いもしなかった。
最初は「最近A見かけないな」と感じる程度だったが、それが一週間、二週間、三週間と続いた時には流石に事件性を疑い、大学の事務に問い合わせた。
そうすれば、Aの両親から休学届が出されている事を知った。
ただ、それ以上はプライベートな事なので休学の理由は教えてくれなかった。
Aを知る他の友人達と「A、マジでどうしたんだろうな?」なんて話す事もあったが、Aが大学に来なくなってから一月が経とうとしたある日、俺のスマホに通知が入った。
レジュメ作りに没頭していた俺は最初こそ無視していたが、ふと表示された差出人を見ればAの名前が刻まれていたので、慌ててスマホを拾い上げて内容を確認する。
Aからのライン通知だったが、本文は無く、ただ尺が60秒ほどの動画ファイルが張り付けられているだけだった。
俺は不審に思いながらも動画を開いた。
再生して間もなくは完全な暗闇だったが、次第にぼんやりとした光源に照らされた畳敷きの和室が映ると、その中心に胡坐をかいたAの姿が映り込んだ。
よく配線作業中に手元を照らす棒状のLEDの作業灯があるが、それに似た照明具を部屋の隅に置いて灯かりを確保しており、正面には三脚で固定されたスマホが置かれ自撮りをしている様な光景に見えた。
ただ、一つ違和感があったのは、そんな光景を第三者視点で撮影したような俯瞰動画をわざわざ送り付けてきた事だ。
Aの趣味を知っていた俺は、恐らく、Aが廃墟で寝泊まりする様子を撮影しているのだろうと理解したが、それにしてはこの動画へのカメラ目線が一切ない事から「変だな」とは思っていた。
動画の内容自体はAがただ三脚のスマホに向かってブツブツとコメントをしている様子を映したもので、これといって最初から最後まで山場は無い。
そんな中身の無い動画だったから、本当に何の目的で送ってきたのか分からなかった。
読み応えあって面白かったです。
そういえば廃墟系のYouTuberで実際に行方不明になった人いませんでしたっけ…
心情の表現や状況を表す言葉が秀逸で、洒落怖ばりに鬼気迫る恐怖が凄く伝わりました。廃墟系YouTuberの方々にも周知させたいお話ですね。
長編なのに読んでいてしんどくない。細部の描写が凄いです。風化して粉まみれのボタンで感動しました、これは知らないと書けない…
その廃墟、第二の犠牲者が出ない事を願うばかりです。
恐ろしい体験でしたね。
気を強く持たないと。
その時の様子が鮮明に想像できます。細かい描写で分かりやすい。
絶叫しそうになった
めちゃくちゃ面白い
映像化してほしいくらい
凄く怖いかったです。この話は良かった。
いつか読んでる中でダントツ怖い。
ほんまにこえぇわこれ
ここ数年で1番怖かったかもしれない
文体に独特の書き癖があってときどき気にはなるが、内容は怖かった。
例のミイラ男がAなのかな?
とにかく読ませる怪談。今時パスワードや指紋認証ロックしていないAのガバガバさぶりはアレだが
怖すぎる…家の玄関が誰もいないのに明かりがついたことあるけれど
それ以上怖い…
今まで読んだ中で1番怖かったかも
若干最後の方に蛇足感じたけど面白かったわ。ありがとう。
低学歴ワイ、意味を知らない言葉複数あり
役所で名前が記録されていればおおよその事は分かるはずだよ、日本人なら
怖いねえ
大丈夫。ずっと見ているよ
マジで怖かった。傑作
あの頭部はAのものではないの?
Aと同じセリフを履いたよね。
そーやって呪いが繰り返される展開を想像した俺はこーゆーの身過ぎかね
Aは怪異から逃げ続けているから会えないのではないか
傑作。昼に出る怪異はガチ勢というが、まさにという感じ。
ビデオ動画、LINE、天袋に襖といった、正統ホラーの技巧にワクワクさせられつつ、2方面戦線からの合体という驚きもあって。
とても面白かった。
あかんめっちゃこわい
映像化してほしい