宣戦布告

体験者 荒谷 恵子 (仮名)
2018年
場所は伏せる

一人暮らしの荒谷さんは困っていた。自宅の庭に勝手に花を植えられるからだ。
ある日犬の散歩に外へ出ると、庭先に見慣れない黄色い花が咲いている。「ヨモギギグ」というタンポポに似た花だった。
ヨモギギクの根元を見ると、土を掘り起こした跡があり、人為的に植えたものだと分かる。気味が悪いので、抜いて捨てた。

数日後、今度は買い物に行こうと外へ出る。庭先に見覚えのある花、ヨモギギクがまた植えられている。引き抜こうとして近づくと、異変に気が付いた。

花や茎や葉におびただしい量の長い髪の毛が絡みついている。毛でぐるぐる巻きにされたヨモギギクが、もがくように風に揺れる。さすがに気分が悪い。

直接触れたくないので、軍手で引き抜いて、近くの公園のゴミ箱に捨てた。

次の日外へ出た荒谷さんは目を疑った。

公園のゴミ箱が庭に置かれている。

ゴミ箱の中には大量のヨモギギクが詰め込まれている。警察へ通報し、庭からゴミ箱を撤去してもらった。警官2人がかりでやっと運べるほど重いゴミ箱だった。一体、誰がどのように運んだのだろう。

後日、庭先に防犯カメラを設置してから、ピタリと嫌がらせは止まった。
きっと犯人は、一部始終見ていたんだろうと荒谷さんは言う。

ちなみにヨモギギクの花言葉は

「宣戦布告」

である。