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呪い・祟り

pikoさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

赤い手鏡
長編 2022/08/16 18:30 7,410view
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私の地元は盆地に囲まれている片田舎ですが、人口はそれなりに多い為、大きめなショッピングモールとか大型スーパーが点々と立ち並んでいます。

そんな土地柄のせいかコンビニなんかも新規オープンしては潰れたり、潰れたと思えば違うコンビニがオープンしたりと忙しない競合が続いていたのですが、少し毛並みの違うリサイクルショップがオープンしたときのことです。

流石にリサイクルショップは市内に一店か二店ある程度で、地元の学生が気軽に訪れる距離には一店も無かった事から私も友達のB子とさっそく行ってみようと言う事になり、週末に向かったのです。

コンビニより広くスーパーより狭い二階建ての店舗。
ドン・キホーテみたいに狭い通路ですが、どこを振り返っても展示品で溢れるそこはまるで掘り出し物が眠る宝石箱の中の様で、色んなジャンルの品々に私は目を輝かせていました。

「何でもあるね」

「すごー。あ、服も置いてるよ。古着かな?」

B子が小走りで向かったコーナーはファッション類が展示された一角。
リサイクルショップという事は古着なのでしょうが、綺麗目なアウターや上下セットの衣服はハンガーラックに掛けられていて、インナー何かはワゴンセールの様にカゴの中に山積みに盛られていました。

その脇にはバッグや小物類もありましたが、流石にブランド物はガラスケースに展示されていて、B子は値札を「ムムム」と唸りながら睨んでいます。

私も何か欲しいモノを探そうと適当に展示品を流すように見ていると、ふと雑貨コーナーに置かれた一際目立った小物が目に入り、立ち止まりました。

「これ可愛くない?」

私が手に取ったのは赤いメッキが目を引くコンパクトな手鏡です。
私の掌より大きな円を描いた本体と折り畳み式の持ち手が付いた、少し子供染みたデザインの手鏡でしたが、鏡の縁に装飾された猫耳を彷彿とさせる突起はとても可愛く思えました。

「ちょっと子供っぽくない?」

B子の言う通りですが、私はどうしてかこの手鏡が気に入って結局購入する事にしました。
値段も1000円ほどで手頃だったと言うのもありますが。

その後も、店内を回った結果、私もB子も少ないお小遣いで何着か服を買ったり、ベッド脇に並べるぬいぐるみやクッションを選んだりと2時間くらい買い物を楽しみました。

しかし、流石オープンして間もないリサイクルショップ。
来店する客がひっきりなしにやってきては、ただでさえ狭い通路がすれ違うだけで大渋滞に発展する始末で、最終的には熱気が凄まじかった事から私達は早々に撤退するのでした。

本当はまだ見回ってないエリアもあったのですが、本日の成果はここまでという事で私達は解散します。

帰宅後、私は事実で今日の戦利品を床に並べて整理を始めました。

結構安くたくさん買えたなー、なんて呟きながら洗濯できるものは洗濯籠へ、ぬいぐるみなんかはファブリーズをかけて明日にでも日陰干ししようと仕分けていると、一番の収穫物である手鏡を手に取ります。

やっぱりこれが一番当たりだな。

さっそく手触りというか持ち具合を確認する為に折り畳みされた持ち手を開き鏡に映った自分の顔を覗き見ます。

店内の熱気が凄かったせいか若干前髪が汗で張り付いていたので手櫛で梳き、横顔を確認して最後に正面を向いてにっこりと笑顔の確認。

そうしていると鏡の縁にある猫の耳が目についてついつい口許が弛んでしまいそうになるものの、ふと明るい場所で手鏡を見れば、傷一つ無い事に気付きました。

前の持ち主が余程大切に使っていたのか持ち手や背中のメッキなんてツヤツヤのテッカテカだし、指先でなぞればキュッと音が鳴りそうな程には綺麗なのです。

そうなるとどうして売却したんだろうと考えたりもしますが、まあ単純にいざ使ってみればセンスと合わなかっただとか成長したから売ったのだろうと思い到り、私は手鏡を折り畳んで机の上に置きました。

きっと前の持ち主は小学生か中学生で、子供っぽい手鏡を手放したのだろうと、そう思ったのです。

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