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呪い・祟り

pikoさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

赤い手鏡
長編 2022/08/16 18:30 7,456view
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夜中、私は宿題を済ませた後はお風呂に入り、リビングで好きな番組を見た後は片手間で友達とラインをしながら歯磨きをして、自室へ戻りました。

B子と戦利品についての感想をラインで語らっていれば時間はあっという間で、気づけば0時を過ぎており、私はB子におやすみのスタンプを送って寝る事にしたのです。

消灯すると机の上に置きっぱなしだった手鏡が常夜光の光を帯びてキラリと私の目を引きました。
そう言えば出しっぱなしだったと思い、手鏡を拾い上げると、猫耳の凹凸を指先で楽しみながら持ち手を開き、薄暗い室内に関わらず自分の顔を覗いて見れば、何やら私の顔が真っ黒いもので覆われていたのです。

「うわっ」

思わず手鏡をベッドの上に放り投げてしまった私は、今鏡に映った自分の顔がおかしかった事に困惑し、暫く手鏡を見つめたまま固まってしまいました。

そして、もう一度確かめてみようと手鏡を拾い上げ、一呼吸置いた後に鏡を覗くと、私の顔……というよりは知らない女性の顔とそれを覆い被す程の長い黒髪が映っていたのが今度ははっきりと見えたのです。

「なにこれ!」

私は怖いというよりかは気持ち悪いと感じて、すぐに電気を点けて再び手鏡を確認しました。
ですが、鏡に映るのは渋い顔をした見慣れた私の顔で、さっきの前髪を垂れ流した様な女性の姿はありません。

暗いから目の錯覚でそう見えたのだろうか。

私は鏡を訝し気に見つめながら再び消灯し、手鏡を引き出しにしまって寝る事にしました。

翌朝、目を覚ますと、何故か引き出しにしまった筈の手鏡が机の上に置いてあったので、私はすぐに母に部屋に入ったのかと問い質したのですが、母は「知らない」の一点張りで、朝食を済ませて早く学校へ行けと私は面倒くさそうに追い払われました。

その日、昼食を一緒に取っていたB子に手鏡の事を話すと、

「あはは、本当なら大当たりじゃん」

と、他人事みたいに笑われました。

まあ、他人事なのですが、B子は続けて「動画で押さえればバズるんじゃない?」と楽しんでいるだけで、私が本当に気味悪がっているのに取り合ってくれません。

それもこれも実害がある訳でもないし、そもそも私の見間違いなのかもしれないので仕方がない事なのですが、私はどうにもあの手鏡に何かあるとしか思えなくて学校に居る間もずっと気掛かりで勉強が手につきませんでした。

その晩、私は再び机の引き出しから手鏡を取り出しては、怖いもの見たさというのか、顔を背けながら視線は向けるといった姿勢で鏡を覗きます。

当然、鏡には変な体勢で映り込んだ私の横顔があるだけで、昨晩の様な女性が写り込む事はありませんでした。

本当に私の見間違えだったのか…そうぼんやりと考えながら手鏡を手の中で回して遊ばせていると、手元が狂って床へ落としてしまいます。
すると、ゴツッと鏡の縁が床に接触した瞬間、中の鏡部分が外れて円盤とボディが分離してしまったのです。

「あっ、やば」

一瞬、壊してしまったと思い床に膝を付いて円盤を拾い上げると、裏面に違和感を覚え、恐る恐るひっくり返してみました。

「うへっ…!」

何と、裏面には血痕と思しき手痕がびっしりと染みついており、赤黒い指紋が部屋の照明に照らされたのです。

あまりの薄気味悪さに私は思わず上擦った悲鳴が出たのですが、不意に今度は持ち手の付いたボディの方が気掛かりになり、円盤を置いて伏せったままのボディを拾い上げました。

生唾をゴクリと呑み込んだ後、ゆっくりと鏡の無い手鏡をひっくり返してみると、そこには赤字で書かれた御札が何枚か重なる様にして貼られていたのです。

手鏡の鏡本体の裏面にびっしりと刻まれた赤黒い指紋と、その鏡を取り外したボディの内側に貼られた御札。

この何とも荒唐無稽な現実を目の当たりにして、私の脱力しきった手の平から抜け殻となった手鏡が滑り落ち、カツンと音を立てて床に転がりました。

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