鈴木君の黒歴史
投稿者:with (43)
今から20年近く前、俺が高校1年の夏、クラスの男子6人と女子5人で旧校舎で肝試しをやった時の事。
当時は今の様な大手の警備会社があったのか知らないが、片田舎の俺の地元の高校には校門近くに守衛さんが常駐するコンテナみたいな守衛所がある。
いつも早朝は守衛さんがその前に立って登校する生徒を見守り、日中は建物の中で何の業務をしているのか分からないが書類に目を通したり、時折校門に目を配らせては警備をしている様子だった。
そして、下校時刻が過ぎれば校門を閉じて施錠し、夜勤の人が校舎の見回りをしているといったルーティンが日常風景だ。
ある日、俺が仲良くしているグループと女子とで肝試しをしようという話になった。
通っている高校には年季の入った旧校舎があって、最近まで部活動のときに活用していたんだが、老朽化問題で立入禁止の閉鎖状態だった。
そんな旧校舎にはいくつか怪談があって、定番のものから土地柄なのか局地的なものまで学生の間に広まっていた事もあり、俺達はその真相を確かめる為に肝試しを決行したのだ。
守衛は旧校舎の前までは巡回ルートに入っているが、立入禁止の厳命があるので絶対に中に入ってこない事が分かっている。
そして、守衛や教師たちは気付いてないと思うが、旧校舎の裏側に面したとある窓ガラスの一つが鍵が掛かっていないのか開く様になっている。
俺達は夜、守衛の目を盗んで学校内に侵入すると、その窓から旧校舎に入り込んだ。
「結構スリリングだな」
「それな」
俺達は普段味わえないスリルに酔いしれると、なるべく校舎の外に光源が漏れない様に下段で懐中電灯を点けて室内を見渡す。
ここは教室のようだが、備品がロッカーや教壇くらいしか置かれていなかった。
「じゃあ、音楽室行ってみるか」
この旧校舎の怪談の一つである音楽室の亡霊というものがある。
音楽室の亡霊とは、部活で日が暮れるまで居残った生徒が旧校舎の音楽室の窓辺に寄り添うように漂う人影が見たという目撃証言が怪談の一つとして広まったもので、その目撃談がいつの世代のものなのかは定かではない。
ただ、俺達の世代の中にもその怪談を実際に目撃したと主張する者が出始めた為、俺達は今宵その真相を確かめにきたのだ。
「てかさ、そんなボロくないよね」
女子の誰かがキャッキャとはしゃぎながらボヤいていたのが聞こえた。
実際、女子の言う通り素人目にはただのコンクリートで出来た校舎の様に見えるが、内面はきっとボロボロなのだろう。
木造だったら目に見えて分かりやすかったんだろうけども。
二階にやってくると、ちょうど俺達が居る反対側、廊下の突き当りが音楽室だ。
途中、閑散とした教室を覗いては肝試しの雰囲気を味わったが、当然幽霊なんかと遭遇する事も無かったから、守衛に聞こえない様に声を押し殺した笑いが広がるだけだった。
音楽室にやってくると半開きの引き戸が俺達の到着を歓迎している様に見え、先頭の男子が「戸締りがなってねえな」と半笑いで開けていた。
中に入ると、有名な音楽家たちの肖像画が壁から見下ろす、なんて事は無くて、ピアノすら置いていない広々とした空間があるだけだった。
「音楽室って結構広くね」
各々自由に音楽室の中に広がると、至って真面目に調査にやってきた俺と一部の男女が、目撃談があった窓辺に近寄る。
以外にもカーテンだけは現存で、日射しに焼けて黄ばんだ独特の匂いが鼻を掠める。
カーテンの隙間から外を見れば、ちょうど守衛所が見切れるように見下ろせた為、これは確認にはもってこいだと思った。
ネタかと思ったら普通に怖くて草
いつも楽しみにしながら読ませてもらってます!有り難う!
なんかワロタけど怖い
霊は不浄なものを嫌うというが…
時間が経ってるとはいえ友達冷静だな