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不思議体験

桃子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

疎遠だった父親の葬式にて
短編 2022/05/06 15:12 1,098view

元々私自身は幽霊や不思議な出来事は信じているものの、0霊感なもので、霊感なんて微塵も無い。いや、無いと思う。そんな私が、疎遠だった…もう10年以上会っていない父親の葬式、といっても家族葬よりも小さい直葬に出た時の不思議な体験について綴ろうと思う。

その時の参加者は、私、私の夫、私の母(父とはもう何年も前に離婚している)、母の再婚相手の男性、父方の兄弟とその妻、といった女性3人男性3人の計6人で見送るといったある意味寂しいお葬式となった。ちなみに、母の再婚相手が参加している事については、思うところはあるもののまた別の話。
それと、私には兄も居るのだが、私同様に父とは疎遠の為、兄は頑なに父の葬式参加には拒否していて最後まで来なかった。

そんな中、おごそかに葬式は始まり、滞りなく進んだ。
…まあ、疎遠とは言ってもやはり父親だ。嫌な事も一杯あったし、母でさえ離婚を選ぶくらいだし、今で言うDV親ではあったけれど、10年以上会っていなくても、やはり”人間の死”というものを身近に感じて胸にこみあげてくるものがあった。

そうしたさなか、お坊さんがお経をあげている最中、ふと右肩の方に違和感を覚える。
肩が凝っているとかではない。今までに感じた事の無い尋常ではない痛み…ずーんとしたような重いじくじくした痛みを右肩に覚えた。

明らかに肩の凝りとは違うそのたとえようのない痛みに、それとなく隣に座っている母に小声で話し掛けると、母の方も何故か今肩が痛いと呟いていた。
更に、父の兄弟の妻にあたる方にも視線をやると、同じように肩が痛むのか肩の辺りを執拗に手でさすっていた。
この右肩の痛みはなんなんだろうと思い、最後に私は父の兄弟と母の再婚相手の男性に目をやると、その二人はなんともないようで普通にお経を聞いているようだった。
ちなみに、夫にも訊ねてみたが、肩の痛みは一切ないようで、何故か女性の参加者のみが肩の痛みを訴えていて、それはお経の間中、その尋常ではない肩の痛みといった現象で起こっていた。

取り敢えずまだ我慢出来る範囲の痛みだったので、その場は我慢する事にした。
そうして一通りお経が終えると、お坊さんが女性参加者に向けて一言。
「痛いところは、お家に帰る頃には消えていますよ」と、とてつもなくにっこりとした笑顔で呟いていたのを今でも覚えている。

お坊さんに対して、私も含めて女性陣は肩が痛いとは一切言っておらず、もしかしたらお経の最中にこちらの小さな呟きが聞こえたのかもしれない。…が、お坊さんはかなりの声量でお経を唱えていたのと、一定の距離があったのと、こちらに背を向けていたので果たして聞こえていたのだろうか…と疑問に思いつつ。

私の肩の痛みは、確かにお坊さんの言う通りに、帰路に着く頃にはふっと憑き物が取れたように消えていた。
ちなみに、地方からの、新幹線を使って駆け付けた葬式だったので、新幹線に乗っている間中は右肩が痛いままだった。

後日、母親から電話があり、肩が痛かった事の話題となり…母曰く「後からお坊さんに話を聞いてね、そのお坊さんが言うには、10年以上会っていなかった娘がわざわざ遠くから駆けつけてくれた事に、お父さんが喜んでいたんだよ」と仰ったらしい。
お坊さんが言うには、亡き父は嬉しくて途中まで着いて行ってしまうけれど、帰路に着く頃には娘さんの元気な姿を見届けて安心して自然といなくなるから肩の痛みの事も大丈夫、との事でした。

0霊感である私としては、葬式の間も、帰路の途中も父親の姿を見る事は出来ずに、猛烈な右肩の痛みのみといった現象でしたが、今思えば、後にも先にもこのような奇妙な痛みはそれ一回きりだったので、お坊さんの言った通りだったのかな…と不思議に思えます。

あと、何故か男性陣には肩の痛みが一切ないのが疑問が残るけれど、女性の方がそういった事には色々敏感だからなのかな、と自問自答で無理矢理納得し。今思い返してもとても不思議なのと、あの肩の痛みはやはり父からの何かしらの形での知らせだったのかな、と今でもそう思う。

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