付き纏う死者
投稿者:N (13)
ある日の仕事帰り、俺は自殺現場を見てしまった。
確か、夜23時を回った人気のない夜道だったか、いつものように残業した帰りにコンビニで御飯を買い自宅のアパートまで歩いていた時の事。
暗がりを照らす赤い明滅と、少しだけにぎやかな数名の団体を見据えて「何だ?」と訝しげに眉根を寄せた。
最初は、こんな夜遅くに人が何人も集まって何やってんだと思ったが、近づくにつれてそれが救急車両を囲んだ人だかりであることが分かると、俺の中の好奇心や野次馬根性に火が付いたのか、人だかりの後列に混じり渦中を覗き込んでみた。
随分と古びた二階建てアパートの一階。
簡素な玄関ドアが開封された状態で、1kほどの室内が丸見えだったが、玄関口から室内の窓ガラスまで吹き抜けた直線状にぶら下がった肉塊が見えた。
俺は嫌な予感がしながらも目を凝らすと、それが人間の首吊り死体だと分かった途端、喉の奥から込み上げるものを感じた。
「自殺だって」
「わたし初めて見ちゃった」
野次馬の中からそんな不謹慎な声を拾い、俺は最悪な気分に陥りながらその場から立ち去る事にした。
残業続きで草臥れた精神には辛く、空腹の体には心底堪えるような絵面だ。
早く帰ってご飯食べて寝よう、そう思った矢先、ふと視線を感じたので振り返れば、自然と意識は先ほどの首吊り死体に向けられる。
「……!?」
ちょうど隊員が遺体を下ろそうとしているところだったのだが、遺体の顔がこっちを向いて、一瞬だが遺体が目を見開いたかと思えば俺と目が合ったのだ。
言い知れぬ畏怖を受けて身震いすれば、まるで夢だったかのように遺体は目を閉じており、隊員や周囲の野次馬連中もさほど騒ぎ立てていない様子だった。
俺は疲れてるのかと思い、早々に立ち去る事にした。
帰宅後、御飯を済ませて風呂に入り、流れるように床へつく。
余程疲れていたのか、人生で初めて遺体を見たというのにあっさりと意識が途絶え眠りについた。
すると、深夜何時か分からないが突然目が覚める。
しかも、眠気が一切ない不思議な感覚に満ちているではないか。
俺はとりあえず体を起こそうと思い至ったのだが、どうにも体が動かない。
暫くして、それが金縛りだと理解した時にはもう遅かった。
気づけば部屋の片隅に誰かが佇んでおり、俺の視線はそこへ集中する。
見たくもないのに目を背けられず、やがてその人影がシンプルなシャツとスウェットを履いた小汚い男性だと認識でき、顔は見えないが男性が俺をずっと見ている事がわかった。
男性は俺が目を覚めているのを理解したのか、スッと近づいてきては、自身の頭部に腕を回す。
ちょうど男性の顎と頭頂部を手づかみするような、猿の物真似みたいに両腕を使い顎と頭に腕をあてがう感じだ。
その意味深な光景をまじまじと見る事しかできない俺が唖然としていると、男性は何を思ったのか、突如として自分の頭を時計回りに捻り出す。
ゴキッと骨が唸りを上げると、男性から「うっ」という呻き声が鳴る。
続けざまに骨が軋むと、男性は腕に一層力を込めて頭を捻っていく。
俺を見下ろすように、男性の顔が時計回りに90度、180度と、まるで秒針が刻む速度で回転していくのだが、その最中に奏でる骨折音や肉を断つ気味の悪い音が強烈で、俺は目を背けたくて必死だった。
健康体ということは幻覚ではないのではないだろうか…
疲れてたんでしょうね。
そして憑かれた。
疲れた時はエロい〇〇でも見てスッキリしましょう。
俺だったら、そんな体験をしたら、遠回りになっても現場の近くは絶対に通らないけどな。
死体は絶対にみたら嫌な予感がしそう・・・
ためはち
某事故物件サイトを見る限り思った以上に事故物件って多いし、偶然現場を見てしまうこともありそう。特に東京とかなら。
理不尽というかなんというか…
こんな経験したくないですな
文章が上手い!!。面白かった!!。
いつも思うけど死体とか幽霊とか裁判にかけて死刑にしてやりたいわ。飛んだ迷惑。