付き纏う死者
投稿者:N (13)
しかし、金縛りのせいか俺は男性が頭を回す光景から目を背ける事ができない。
『ウーッ!んぐーッ、ふーッ!』という、男性の断末魔に近い苦し気な呻き声が絶え間なく響き渡る。
グギギ、グジュッ、ゴキッ。
男性の顔が270度くらい回った所で、男性の口の中から肉厚な舌と共に赤黒い飛沫が噴き出す。
俺の布団に付着するが、男性はお構いなしに頭を回し続け、遂に一周してしまった。
シルエットとしては元通りなのだが、俄然、飛び出しそうな両目とだらしなく垂れた舌のせいで男性の形相は見るに堪えないものとなっており、何より一回転した首の皮が伸びたり裂けたりとで血飛沫を流して惨たらしい。
そして、既に虫の息に等しい男性が何かを口ずさんでいる事に気づいた俺は、聞きたくもないが自然と耳を傾けて聞き取ろうとする。
『あぁ……はッ……くるじ…ぃ…』
息も絶え絶えといった男性が口ずさんでいたのは、「苦しい」という悲痛な叫びだった。
俺は何とも言えない感傷に浸りながら、ただ男性が血反吐を垂らしながら苦しんでいる様を見続けていると、やがて意識が無くなったのか、気が付くと朝日に照らされたいつもの部屋の天井が広がっていた。
あれは夢だったのか?
なんて思いながら体を起こすと、やはり悪夢のような出来事が走馬灯のように脳内を巡り、自らの頭を回した男性の顔が昨晩帰り道で見た首吊り死体の顔とリンクしたのだ。
俺はハッと顔を上げると、目の前に悪夢で見た男性の顔が間近に現れ、
『一緒に来て』
と、今にも飛び出しそうな目玉を向けてそう吐き捨てた。
「うわああああああああっ!?」
俺はちゃぶ台返しする要領で掛け布団を巻き上げると、一目散に玄関へ向かった。
しかし、寝起きの身体を急に起こしたせいか急激な立ち眩みのせいで視界がぐにゃりと歪み、玄関戸を突き破るようにこじ開けた途端、足がもつれて階段を一直線に転がり落ちた。
ドタタタタ、とけたたましい音を立てたせいか、早朝という事もあり同じアパートの住人が何人か外へ顔を出し、盛大に転げ落ちて横たわった俺に視線を向けるなり、「だ、大丈夫ですか!」と駆け寄ってくる。
幸い頭をぶつけなかったのか意識はあり大ケガを負う事はなかったが、未だ立ち眩みの眩暈が続いて焦点が定まらず、俺は遠視や乱視のようにぼやけた視界を手繰るように見据え、駆け寄ってくる人達へと視線を移す。
「大丈夫ですか?」
「救急車呼びましょうか?」
親切な住人が俺の容態を心配して声を掛けてくれるのはありがたいが、救急車を呼ぶまでもないので、俺は体中をぶつけた痛みに耐えながら「だ、大丈夫です、立ち眩みがして、滑っただけなんで」と、若干気恥ずかし気に応えた。
見たところ出血もないせいか、住人達は安堵の息を漏らした後、「本当に大丈夫ですか?」と俺の顔を覗き込んでくる。
やけに親身だなと思いつつも、俺は「ほ、ほんとに大丈夫、なんで……」と断りを入れようと思った刹那。
『イタイ?』
目の前のぼやけた人物が目玉が半分飛び出した男性の面持ちへとはっきり切り替わる。
虚を突かれたように、俺の心臓がビクッと脈打つと、俺は何だか息苦しさを感じて過呼吸のようになる。
俺の容態の変わり様に住人達はざわめきだしたが、俺が小鹿のように小刻みに震えながらも立ち上がり、軽く頭を下げながら自宅に立ち去った事で強制的に解散となった。
そして俺は再び自宅に戻るなり廊下で倒れてしまい、そのまま眠るように意識を失った。
健康体ということは幻覚ではないのではないだろうか…
疲れてたんでしょうね。
そして憑かれた。
疲れた時はエロい〇〇でも見てスッキリしましょう。
俺だったら、そんな体験をしたら、遠回りになっても現場の近くは絶対に通らないけどな。
死体は絶対にみたら嫌な予感がしそう・・・
ためはち
某事故物件サイトを見る限り思った以上に事故物件って多いし、偶然現場を見てしまうこともありそう。特に東京とかなら。
理不尽というかなんというか…
こんな経験したくないですな
文章が上手い!!。面白かった!!。
いつも思うけど死体とか幽霊とか裁判にかけて死刑にしてやりたいわ。飛んだ迷惑。