伸びる道
投稿者:サクコウ (15)
小学校2年生の頃、友達の家で遊んでいた私はすっかり帰るのが遅くなってしまった。
と言っても、その頃の私と友達の家は子供のペースで歩いても5分とかからなく、加えて1本道だったため、親もそれほど心配はしていなかった。
夏も終わって、だいぶ日が落ちるのが早くなっていた時期だった。
辺りの薄暗さに多少の怖さを感じつつ、私は通い慣れた道を歩いて行く。
私と友達の家のちょうど真ん中辺りには、赤いポストがある。私はそのポストをめがけて歩いて行くのが好きだった。だんだんとポストが近付いて来るのが面白く感じていたのだ。
しかしその日は、どれだけ歩いても歩いても、ポストに近付けなかった。
確かにそこにあるのに、距離が全く縮まらないのだ。
私は次第に恐怖を覚え小走りになり、ついには全力で走った。それでもポストの位置は変わらない。道が伸びていくように感じていた。
疲れ果てた私は走るのをやめ、とにかく歩き続けた。
当時の体感では、好きなアニメ番組1本分の時間より、だいぶ長く歩いていたように感じられた。
すると突然、景色が変わっていくような感覚があり、ポストがいつものように近付いてきたのだ。
このチャンスを逃すまいとするように、私はまた走り出す。ポストは私を通り過ぎ、ついに家まで辿り着いたのだ。
半べそをかきながら家に入ると、友達の家を出た時間から5分ほどしか経過していない。
30分、いや、1時間は確実に歩いていた感覚があり、実際に息も切れている。母にそのことを説明してもただ笑って聞いているだけだった。
大人になった今、ただの勘違いか、それとも夢なのかとも考えるようになったが、どうしても勘違いでも夢でもないと思ってしまう。いまだに不思議な体験である。
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