悪魔の絵文字

ある日、友達が「明日の三限サボってあそぼ～！」と私にメッセージを送って来た。

私はそのメッセージに「いいね」と返信しようとした。

でも、それだけだと素っ気ないから、悪魔の絵文字を後ろに付けようとして「あくま」と文字をタイピングした。

すると、いつもの角の生えた紫色のゆるキャラ悪魔のアイコンが出てこなかった。

代わりに、実写と見まごう黒い山羊のようで、真っ黄色の濁った瞳に豚の鼻をした不気味な生き物が変換候補に現れた。

何かのプロモーションだろうか。

異様なその絵文字を私は慌てて消した。

もう一度「あくま」と入力しようとして、その手を止める。

私のアカウントのアイコンが、豚鼻の、黄色い目をした不気味な黒山羊に変わっていた。

乗っ取りスパムを踏んでしまったのだろうか。

そんな考えがもたげるが、違う、と本能が否定する。これは、危険なものだ。

どっと冷汗が出てきて、脳内を警告が駆け巡る。

黄色いその眼が動いたような気がして、理屈を抜きにした恐怖に私は襲われた。

気が動転して思わず私は「てんし」と文字を入力した。

もしも悪魔を呼んでしまったのなら、天使だって呼べるはずだ。

するとスマホの画面が真っ白になった。

それから、電源を切っても、再起動してもスマホの画面はバッテリーがなくなるまで白く輝き続けた。

私はそのままスマホを機種変した。

未だにＳＮＳには復帰できていない。

私のアカウントのアイコンがまたあの悪魔に乗っ取られるのが怖いからだ。