お風呂場の赤い眼差し
投稿者:シンディ (8)
仕事が終わった金曜日、わたしはお風呂に入ろうとしていました。いつもソシャゲのログインボーナスを回収してから入るのが習慣だったので、時刻は深夜になろうとしていました。
わたしはお風呂に入る時、電気を点けません。危ないと思うかもしれませんが、温度管理パネルのデジタル表示が煌々と光っているおかげで、懐中電灯を持ち込んでお風呂に入るような、ちょっとしたキャンプ気分を味わえるので、わたしはこの遊びを気に入っていました。
掛け湯をして湯船に浸かり、曇りガラスの窓と向き合うように足を伸ばして、防水プレイヤーで推しのダンスナンバーを流そうとした時でした。窓の外がバッと真っ赤な光に染まったのです。
強烈な、サーチライトような、でもどこか生き物の視線のような……真っ赤な光が窓の外からわたしを容赦なく照らし出しました。光を放っているそれは四、五メートルほどもありました。もしもこれが「何か」の目玉だったら……この「何か」が窓を破って襲い掛かってきたら……赤い眼差しが、瞬きするように一度、明滅しました。助けて、と声を上げようにも、喉が引き攣って呼吸までもが苦しくなっていきました。
身体の力が抜けて、湯船に顔まで沈んでしまいそうになった時、隣の家で飼われている、柴犬のブンちゃんが庭で大きく吠えたのです。その瞬間、赤い眼差しが大きく蠢いて、あっという間に元の夜の暗闇に戻りました。ブンちゃんはまだ吠えていました。わたしは、湯船から這い出して、はぁっと大きく深呼吸をして、震える身体で風呂場の電気を点けました。
次の日、わたしがアニメショップへ行こうと出掛けると、お風呂場に面した道路に途方もなく大きな、重たい物を引き摺ったかのような痕が残されていました。隣の家のおじさんが「何だってあんな夜中に吠えたんだ?」と不思議そうにブンちゃんを叱っています。わたしは帰りにジャーキーを買って、ブンちゃんに差し入れようと思いました。また夜中に、赤い眼差しの「何か」が来たら助けてもらえますように、と。
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