遺品整理
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
実家で私の両親と暮らしていたおばちゃんが亡くなった。
2~3年前からおばあちゃんはやたら体調がすぐれないと訴えていたらしくて、去年病院で受診したのだが、この時にやっと末期の肺がんだとわかった。
念のため別の病院でも受診したが結果は同じだった。もってあと半年くらいだろうと言われていた。
それから何とか治療を受け、半年を超え、1年近く経った頃に亡くなった。
私は実家を離れていたから、おばあちゃんの様子は母からの連絡でしか知らなかった。
おばあちゃんの様子を聞くと、抗がん剤が効いている間は容体はまだ良かったそうだ。
しかし抗がん剤も次第に効かなくなり、あらゆる治療を試したものの、所詮その場しのぎでしかなかったらしい。
治療の効果が無くなると、全身が激しい痛みで苦しみ、食事や睡眠もまともにできなかったという。
本当に半年で亡くなったのならその苦しみから逃れられるはずが、そんな状態でなぜか数か月延命したのだ。
それで逆に、いつまでこの痛みが続くのか不安で仕方が無かったらしい。
母が言うには「早く死にたい」がおばあちゃんの口癖になっていたそうだ。
私は遺品整理や部屋の片づけを手伝うため実家へ向かった。
おばあちゃんの部屋の押し入れにはもう最低限の物しか残っていなかった。
おばちゃんは自分の死期を悟って「終活」を進めていて、たくさんの物を処分していたようだ。
押し入れには服や着物、思い出の品々などが入っていた。
その中に、長さが30センチほどの長方形の桐の箱があった。
おばあちゃんの思い出の物としては埃も被っていなかった。
やはりその中身を確認しないといけないから、ゆっくりと紐を解き、箱の蓋を開けた。
「何これ…?」
箱の中には布製の、決して上手とは言えない手作りの人形が入っていた。
おばあちゃんは昔から裁縫が得意で、ちょっとした手提げ袋のような小物を作ることが多かった。
しかし、人形となると勝手が違っていたみたいで上手にはできなかったようだ。
人形はきちんと着物が着せてあるのだが、そんなことはどうでもよくなるほど、その人形は異様だった。
人形には裁縫に使う待ち針が4本刺さっていたからだ。
針は、頭、左右の胸、そして右足に刺さっていた。
針はそれぞれリボンが巻かれ、長さが3センチほどの旗のような形になっていてマジックで何か書いてあった。
4本の針のうち、3本はわずかな錆やマジックの滲みがあって少し古びていた。
しかし右胸に刺さっている1本だけが最近の物のようだった。
私はなんとなく気味が悪くて人形を取り出せず、箱ごと母に見せた。
リボンの文字は滲んでいて私には読み取れなかったが、母はそれが亡くなった3人の親戚の名前だと教えてくれた。
とても良かったです。
人形を作ったのはやっぱり…
祖母作製で、母に引き継いだのではないかな。
祖母も痛みに苦しみ、娘たる母に「いっそ、ひと思いに」と言いながら。
もしかして、母が祖母を…?
二人の間に何かあったのだろうか…
と考えずにはいられない終わり方
ですね…。
ここ数日でたくさんの「怖い」を頂きありがとうございます。
でもその理由が分からないのが一番のホラーです。
こんなことを書くと怒られそうですが。
作者より
人を恨んだりする気持ちを形にするのは、怖いですね。