幻のおじいちゃん
投稿者:湊 (22)
小学6年生の頃、学校からの帰り道は途中までしか友達と一緒に帰れませんでした。
一人になってからの道は明るく人通りもあるので不安な気持ちは全くなかったのですが、ある時、初めて見かける人と出会ったのです。
その畑の持ち主のことは知っているのですが、その日だけは知らない人が畑仕事をしていました。
しかし、よく見てみると畑仕事をしていません。ただしゃがんで地面に向かって何かつぶやいているのです。
年齢は70代から80代の地味なおじいちゃんでした。知らない人でもあり、こちらを見ているわけでもなかったので私は素通りして家に帰っていきました。
それから一週間後、その畑の持ち主からこんな話を聞かされたのです。
あの畑を大事にしていたのは持ち主のひいおじいちゃんでした。
そのひいおじいちゃんは行方不明のまま未だに見つかっていません。今で言う認知症で徘徊したまま居なくなってしまったようなのです。
もちろん、現在は100歳を超えているので生きていない可能性が高く、親族たちもどこかでのたれ死んでいると思っていました。
ところが、先日、ひいおじいちゃんが息を引き取ったということが分かったのです。どこかの施設で保護されており、巡り巡ってようやく畑の家のひいおじいちゃんであることが分かったということでした。
私が見たあのおじいちゃんはその畑の持ち主のひいおじいちゃんだったのかもしれません。
大好きな畑に幻となって戻ってきたあの日に亡くなったのかもしれません。
そんなふうに思ったのは姿を見た私だけでした。
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