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ヒトコワ

繭さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

池に洗剤を入れた犯人
短編 2022/01/20 20:22 2,132view
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私が子どもの頃通っていた小学校の話です。
その学校には小さな人造池があり数匹の鯉が泳いでいました。生き物が好きな私は毎日鯉を観察するのを楽しみにしていたのですが、ある日事件が起こります。誰かが池に洗剤を投げ込んで鯉が全滅したのです。

水面に腹を仰向けて浮かんでいる鯉の第一発見者となったのは私でした。
当時のショックは大きく、しばらくの間保健室でカウンセリングを受けました。保健室の先生は若く綺麗な女の人で、鯉の死を嘆き悲しむ私を優しく慰めてくれました。

池に洗剤が投げ込まれた事件を受け、校長先生は朝礼で生き物を愛する心や命の尊さを説きました。教師や生徒たちは一様に神妙な様子で話に聞き入っていましたが、私は一体誰が犯人なのか、疑心暗鬼に陥ってました。

死んだ鯉は花壇の隅に埋葬されました。そこには「鯉のおはか」と油性ペンで書いた札が立てられ、毎朝池に挨拶に行く代わりに花壇へ行き、手を合わせるのが私の日課になりました。
池に洗剤が投げ込まれてから一週間後、鯉のおはかを熱心に拝んでいるとぱしゃんと何かが跳ねる音がしました。もう池には何もいないはずなのにと不思議に思って覗いてみると、底の方でゆらりと影が揺れて小さな泡が浮かんできました。

「あっ!」

水面ぎりぎりまで浮かび上がってきた鯉の顔は、私の大好きな保健の先生の顔にそっくりでした。人面魚の出現にびっくりした私は皆にその事をふれ回ったものの、再び池に戻った時には既に消えていました。
その後保健の先生は学校を辞めました。いくら理由を聞いても担任は教えてくれません。鯉を殺した犯人はやっぱり彼女だったのでしょうか。

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