ファミレスの幽霊親子
投稿者:廉 (8)
昼下がりにファミレスで友達とお茶をしていると、通路を挟んだ隣の席に幼稚園の制服を着た女の子とお母さんが座った。
二人は料理を注文し、デザートと飲み物も一緒に持って来て欲しいとお願いしていた。
空いていたので注文品はすぐに並び店員が立ち去ると、女の子がはしゃぎ、母親も嬉しそうに話し掛けていた。
その時、道路を爆音の暴走族が走り抜けた。
友人は驚いて外を見た。
「え、嘘でしょ、まだ暴走族とかいるの?」
「いるよぅ、国道沿いに住んでると、毎晩同じ時間に通り過ぎる音が聞こえるんだよぉ」
「マジか」
「マジマジ。姿は見た事ないけど、音だけはしっかり聞こえる」
「知らんかった」
「そういえば最近の不良の制服ってどうなってるんだろう?私らの頃は長ランとか短ランとかだったけど」
「知らんけど、さすがに今時な感じになってるんじゃないの?」
お互いに顔を見合わせた後で同時にスマホを掴み、検索していると店内が慌ただしくなった。
何事かと様子を伺うと、困った感じの店員が近付いて来た。
「あの、こちらに座っていた小さなお子さんを連れたお客様が何処に行ったか見ていませんか?」
隣の席は空で、手つかずの料理が残されていた。
「ええと……料理が来た所は見たんですが、その後は分からないです」
私が答えると、友人も同じように答えた。
「そうですか、失礼しました」
店員たちが忙しく歩き回っていたが見付からなかったのか、手つかずの料理は下げられてしまった。
「食べないで逃げたって事は……嫌がらせ?」
「幼稚園児連れて?」
それは根が深そうだと小声で話し合っていると制服警官が二人来て奥へ入って行った。
ドリンクバーで飲み物を追加して青春時代の不良について語り合っている所に店長が来て、奥で話しが聞きたいと言うので付いて行った。
スタッフルーム的な所に置かれたパイプ椅子に座らされて、警察官に聞かれた。
「隣のテーブルに座っていた方の服装や髪形など、覚えている限りでいいので教えていただけますか?」
「娘さんは幼稚園の制服を着ていました。お母さんは若くて……あれ?」
「暗めの茶色の髪が肩に掛かるくらいで、上は白のニットで、下はモカ系のロングスカートで、顔は……色白で細身だった、ような?」
すぐ隣に居たのに、しっかり見たのに、思い出そうとするほど曖昧になる。
「え、良く覚えてるね、私、何か全然思い出せないんだけど?」
「いや、私も何か曖昧になってきた。ニットじゃなくてシャツだったかも?」
「あ、大丈夫です。上は白で、下は薄茶色のロングスカートですね」
「たぶん、そうだったはずです」
「幼稚園の制服を着た娘さんと、若い母親で間違いないですか?」
「はい」
「そうです」
「ほら、居たんですよ本当に!」
店員の女の子が悲鳴のような声を上げる。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。