葬儀の予約
投稿者:熊猫 (10)
これは私が、幼少のころに体験した実話になります。
当時、私の曽祖父は病院に入院しており私は定期的にその病院へお見舞いに母に手を引かれて行っていました。
最初は、短い期間の入院で退院できる見込みでしたがなかなか容体が安定せずに入院生活が長引いていきました。
ある日、曽祖父の見舞いに行った時の事、見舞いが終わり、帰ろうとしているときに病棟の看護師さんから呼び止められ、質問をされました。
曽祖父が「母さんが会いに来てくれた~」と嬉しそうに話すというのです。
ここでいう『母さん』とは曾祖母の事であり、曾祖母は曽祖父が入院する前からほかの病院に入院しており、曽祖父が入院中に他界していました。
ただ、曽祖父の病状の悪化につながる可能性があったため、曾祖母の死は曽祖父には知らせていませんでした。
看護師からの話をうけた時点ではきっと夢でも見たのだろうと思っていたのですが、その後も曽祖父は看護師さんだけではなく、私たちまでにも曾祖母が会いに来た話をしました。
そして、それから1週間もしないうちに急に曽祖父の容体が急変し家族全員が呼ばれました。呼吸器につながれて寝たきりになっている曽祖父をみながら私は何が起こっているのかがわかりませんでした。当時の私は人の死というものがあまり実感できない年齢でした。
家族みんなが涙ながらに曽祖父に寄り添って見守る中、曽祖父が確かに言いました。
「みんなおるなぁ。母さん」
この言葉を家族全員が聞きました。そしてそれから数時間後、祖父は息をひきとりました。
家族全員で悲しみにくれながら葬儀の準備などを手分けするために曽祖父が住んでいた家に向かいました。
到着したとき、何人かスーツ姿の人が来ていました。話をきくと葬儀屋の方だとの事で曽祖父の葬儀についての打ち合わせをしたいとの事でした。
しかし、この時点では誰も葬儀屋に電話などしていません。どうやって曽祖父の死を知ったのかを葬儀屋さんに尋ねたところ、
「年配の女性から先ほどお電話があって、主人が亡くなったという事で。」
ここで聞いた年配の女性という言葉、あと主人という言葉に全員が息をのみました。
死んだ曾祖母が予約したんだと。
もしかしたら曽祖父を連れて行ったのは曾祖母かもしれません。
怖い!こんな奥さんは怖い!