ポニーテール
投稿者:みなづき (2)
「昨日、洗面所に女の人がいましたよね」
娘と、その母である私は所謂「霊感があるタイプ」であった。
過去形な理由は、高校生になった娘が、今はあまりそういった類のものを感じなくなったからに他ならないが、とにかく小学生だった頃の娘は「視えたもの」について私への報告を怠らなかったと記憶している(別に強制していたわけではない)。
そんな娘が小学校へ入りたての頃、私の友人が自宅へ遊びに来たことがある。
この友人も私たち母娘同様「何か視えたり感じたりする」タイプであり、冒頭の台詞を口にした本人でもある。
「あー、やっぱり?」
なんとなくは感じていたが、やはり。
洗面所に、女性がいる。
「水色のワンピースにポニーテール、かわいらしく小首を傾げた感じの女の人でした」
友人には随分とハッキリ視えていたんだなと感心しながら、そういえば娘は昨夜、特に何も報告してこなかったなと思い出す。
ちなみに、私にはその容姿までを視ることは残念ながらできなかった。
帰宅したら娘さんにも聞いてみてくださいと言われ、娘にもまったく同じ服装や髪型の女性が視えていたのなら本物だな、と私は少し楽しみにしつつ、夕食の買い物をして足早に自宅へ戻った。
件の洗面所で手を洗っていたら、同じく帰宅した娘がひょっこりと顔を出す。
「おかえり。手を洗ってうがいね……と、そういえば、昨日ここに誰かいた?」
私がそう聞くと、娘はハッと思い出したように少し早口で喋り出した。
「そうそう!寝る前におかーさんに話そうと思ってたんだけど!つかれて寝ちゃった」
なるほど、やはり何か感じていたのか。
「どんな人が視えた?どんな服装だった?」
「おんなのひと。うすい青色のスカートがつながった服……えっと、ワンピース?だった」
ふむふむ、たぶん水色と言いたかったんだろうななどと勝手に推察しつつ、私はうっかり「で、その人はポニーテールだった?」と聞いてしまった。
本来なら娘に、髪型も具体的に言わせたかったのだが。
「ポニーテール?って何?」
娘が質問してきた。
そうだった、娘はあまり髪型やオシャレに興味がない。
ポニーテールが、わからない。
「どんな頭だった?髪、どんなふうになってた?
どんなひとだった?」
そう聞いた私に。
娘は無言で両手をすっと上げて、すべての自分の髪をギュッと掴み、頭頂部あたりに持ち上げて。
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