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不思議体験

埴輪さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

誰とも話してはいけない話
短編 2021/11/12 15:29 2,508view

夢をみた話。

夏にとても暑い日が続いたとき、寝つきが悪い日が何度かあった。
その日は寝つきが悪いながらもなんとか眠りについたのだが、暑さのせいか夢をみた。

隣に友人がいて一緒に歩いていた。一緒に遊んだ帰りなのか、時間帯はもう夕方で日が沈みかけていたのを覚えていた。
お互いの家に帰るために近所で別れ、帰路につくために歩いていたところ信号に引っかかってしまい横断歩道の前で信号が変わるのを待っていた。

「やあ。久しいね」

隣から声をかけられた。同じく信号を待っていた男からだった。顔を見ると先ほどとは別の友人だった。ここでは彼のことをFと呼ぶことにする。Fは物腰柔らかでいい奴だったなという印象を持っていた。卒業後は彼が大学進学のために遠くに行ってしまったことを覚えている。久しぶりに見たせいかテンションが上がってしまった。

「めっちゃ久しぶりじゃん!元気だった?」
「まあね」

「あれ?でもたしか都会の方進学したよな?なんでこっちに?」

夢だったため記憶はおぼろげだがこんな会話をしていた気がする。テンションが高い私をうるさいと咎めもせずにただニコニコと笑ってFは答えた。

「盆だからね」

ああなるほどと納得した。盆だから帰省したのか。
信号が青になって一緒に横断歩道を渡った。家の近くまで話そうかと今度はFと一緒に帰り道を歩くことになった。

他愛のない会話をしながら歩いて私の家が見え始めたころ、途中でFが立ち止まってしまった。隣で歩いていた彼が急にいなくなったので不思議に思って振り返ると、どうも私の家を見つめているようだった。どうかしたかと尋ねても曖昧な返事を返されるだけでFはそこから一歩も動かなかった。仕方がないからここで別れようという旨を伝えるとようやくFが口を開いた。

「今日はもう誰とも喋らない方がいい」

意味が分からず「は?」と返してしまった気がする。「言ったからね」とFはそのまま私に背を向けて帰ってしまった。そんなことをする人間ではなかったので、驚きつつも彼の背を見送った。最後まで私の家の方面を見ていたことは覚えている。なんとなく従わないといけない気がして、あとは無言で帰った。

家に着くと誰もいない。ただいまを言う相手がいないことは寂しかったがまあいいかと思って出迎えてくれた飼い犬を撫でる。

まだ家族は仕事なのかなと茶の間で待っていると外から物音がした。ああ、帰ってきたんだなと家族が家に入ってくるのを待っていた。ただいくら待っても入ってくる気配がしない。
おかしいなと思い始めたころ外から声が聞こえた。

「おーい」

父の声だった。

もしかして鍵を忘れたんだな、と思い玄関の方へ向かった。
玄関にある鍵が並んでいる場所を見ると、帰ってきた私以外の鍵はない。あれ?と思いながらもまあ鍵ぐらい開けてやろうと思いドアに手を伸ばした時、

「おーい」
「おーい」
「おーい」

とまた父の声が今度は連続で聞こえた。なぜか違和感を覚えた。父に懐いている飼い犬が威嚇するような吠え方をしていたからだったと思う。
ふとFの言葉を思い出す。「今日はもう誰とも喋らない方がいい」と。「盆だからね」とも。

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コメント(1)
  • 不思議な夢ですね。
    そういった夢を見て誰とも話をしてはいけないと言われてもそんな状況だと私ならは~いと声を出してしまいますね。

    2021/11/13/13:21

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