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不思議体験

四々子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

自称霊感のある友達
短編 2021/10/28 19:59 2,210view

私自身には全くと言っていいほど霊感がないのですが、私の友人に、霊感があると自称する女性──仮にA子としましょうか──A子が居ました。
と言っても、常日頃からやれ霊がやれ呪いがと吹き散らすようないわゆる自称霊感ちゃんではなく、
飲みの席などで、私霊感ありま〜す!あなたの肩に日本兵が!などとおちゃらけて話すような、明るい女性です。
とある、夏も終わろうとしていた九月初旬、私とA子を含む友人数人のグループで、肝試ししようという話になりました。
しかし、現代日本で肝試しができるような場所に行くとなると、大抵何らかの法に抵触するし、誰かに迷惑が掛かってしまう……ということで、
深夜、山道の路肩に車を停め、森の中を少し歩いて雰囲気だけでも楽しもう(本来、これも褒められたことではありませんが)ということになりました。
懐中電灯と木の棒、そんな簡素すぎる装備で山に突入したものの、特に危険な場面などはなく、
ズボンにひっつき虫がくっついてヤダ〜、程度の比較的和やかな雰囲気で、草や枝をかき分けかき分け奥へと踏み入っていました。
すると、足元を照らしていた懐中電灯の光がどう見ても人工物である木の板を照らしました。
光を前方へ向けると、朽ち果てた、という表現がピッタリ……というようなボロ屋が姿を現しました。
我々は迷ったものの、人目のなさと夜の恐怖がもたらす高揚感から、ボロ屋に足を踏み入れてしまいました。

民家の戸や窓は、外されたのか崩れ落ちたのか全てポッカリと空いて黒黒とした闇を覗かせており、我々がそうしたように枝や枯れ葉も入りたい放題でした。
そのため、ガサガサ、バキバキと、およそと室内は思えない音を立てながら廊下を進んでいると、
「ここは……やばいよ。あ〜〜、だめだわ。」
A子がそう言い、足を止めました。
A子は場を盛り上げる為によくそういうことを言う子でしたが、その時ばかりは真剣な表情でした。
一瞬、どうする?という空気の読み合いが起こりました。
いかに家がボロくても、いかに我々のテンションがおかしくても、勝手に他人の家に入ることが犯罪であることは全員わかっています。誰かがやめようと言うのを待っていた節さえあります。
しかし、ここまで入ってしまった以上、じゃあ、と引き返すのもなんだかな、という気持ちも無くはないのです。
「A子、なんか見えちゃった?」
友人の一人が、おちゃらけて言います。
「男……の、サラリーマン?みたいな気配が……。」

A子の発言に、ピリッと空気が張り詰め、皆黙りこんでしまいました。
………………。
「いやいや、A子、これ。」
私はA子にスマホの画面を見せつけました。
そこには、[〇〇山中で40代女性の遺体、自殺か]という記事。
私は、A子がやばいと言い始めたとき、本当に何かあるのかも、と山についての事件を調べてみたのです。
結果、〇〇山とは今まさに我々がいる山で、実際に女性自死という曰くがあるらしいことが分かりました。
が、
「男のサラリーマンじゃないじゃん、だいたい、なんだよサラリーマンの気配って」
と、私はわざと大きめの声で茶化してみせ、
「あっれー、あたしもニブったかな?」
A子もそれに乗ったことで緊張は解け、同時に、ボロ屋でも勝手に入っちゃだめだろうという方に意識が向き、我々はすごすごと退散したのでした。

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