睨むお雛様
投稿者:YUCHI (9)
私は戸惑いながらも散らかった我が家にその足で来てもらうことにしました。
友人はお雛様どこ?とすぐにお雛様のところへ行き、袋を開けました。
お雛様を見た友人は、このお雛様、全然飾らなかったでしょう。
これをくれた人がお人形に入ってる。ものすごくあなたのことを怒っている。と言うのです。
にわかには信じられませんでしたが、私はお雛様が我が家に来た経緯を友人に話しました。
すると友人は気持ち悪いかもしれないけど、今から一緒に飾ろうと言うのです。
そして黙々と飾る準備を手伝ってくれました。
友人は飾り終わると、お雛様毎年飾ろうねとだけ言い残し、怒ったお雛様と私を残して帰ってしまいました。
私は夫が帰宅するまで、鳥肌が止まらず、不安でいっぱいでした。
夫が帰宅すると、雛人形が飾ってあるので、とても驚いていました。
私は今日のことを夫に話して聞かせました。
すると、夫が驚いた表情で、おい、お雛様、笑ってないか?と言うのです。
恐る恐るお雛様を見ると、そこには昔ながらの穏やかで優しい表情のお雛様がいました。
私はすぐにこの前の写真を見返しました。お雛様は明らかに表情が変わっていました。
夫も、全然表情が違うなと、驚いていました。
私は穏やかなお雛様の写真も撮りました。
一週間後、友人からその後どうしているかとメールがありました。
私は夫が帰ってきたら、お雛様が笑っていたと話、穏やかなお雛様の写真も添付してメールをしました。
すると、友人から電話がかかってきました。
電話に出ると、友人は、お雛様飾って良かったね。
お義母さん、旦那さんに見てもらえて喜んでる。と言うのです。
義母は娘にプレゼントしたと言いましたが、本音は愛する息子の娘である孫にプレゼントしたわけです。
つまり自分の愛する息子と孫が、この雛人形を大切に飾ってくれるのを期待してプレゼントしたということです。
友人からは、これからは毎年、 旦那さんと一緒に飾った方がいいとアドバイスをもらいました。
私は処分したかったのですが、義母の願いに理解できる部分もありましたし、何よりまたこういったことがあっては恐ろしすぎるので、諦めて新しい家にも持っていくことになりました。
普段は家事もろくに手伝わない夫ですが、お雛様に関しては、自分の母の供養の意味も込めて、毎年一緒に飾ってくれるようになりました。
私も手料理に力を入れて、お雛様は毎年パーティーをするようになりました。
それからは、お雛様が怒った顔をすることは今のところありません。毎年、穏やかで優しい表情のままです。
よく人形には魂が宿ると聞きますが、それは持ち主のものだと思っていました。
今回のようにプレゼントした人の魂も宿るのだと驚きました。それほど人形は人の思いが宿りやすいものなんですね。
怖いけど、ちょっと切ないよな。