某霊園にて
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
短編
2021/10/18
01:11
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俺はそう言って、墓に刻まれた弟の名前を指さした。
さすがに線香などは持ってきてないから、手を合わせてお参りだけを済ました。
後ろを振り返ると、俺のそんな姿を見たメンバーの、何とも言えない表情が見て取れた。
「ごめん、もう戻ろう。」
集合時間が迫っていた事もあって、すぐに墓を離れた。
しばらく歩いていくと、
「にーちゃん!」
誰かが自分の兄を呼ぶような声が聞こえた。
全校遠足だからここに来た兄弟もいるはずだから、それが誰か特に気にしなかった。
「にーちゃん!」
また同じ声が聞こえた。俺は周りを見回したが、俺のグループ以外の生徒は誰もいなかった。
おかしいな、と思い後ろを振り返ると、親族の墓の後ろに人影が見えた気がした。
「どうした?」
「な、何でも無いよ。」
グループの一人が俺に声をかけたが、彼にはその声は聞こえてなかったようだ。
「にーちゃん!」
また声が聞こえた。声は中学生にしては幼く、小学生の低学年といった感じだった。
しかも、この声は聞き覚えがあった。
それはまぎれもなく、弟の声だった。
「にーちゃん!にーちゃん!」
また声が聞こえた。
俺は振り返らなかった。振り返ったら「それ」は俺に付いてくると思ったからだ。
だから、俺は絶対に振り返らなかった。
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シンプルな体験談みたいですき
振り向いても良かったんじゃないかと思う
生前でよっぽど基地外な人間でもないなら害を起こすわけでもないんだし
切ないよう…
住む世界が違うんだ。
これでよかったんだよ。