ズリズリ、ズリズリ
投稿者:Sennogi (6)
ズリズリ、ズリズリと音がしたのは多分に折られた生木を何かが引きずっていたからだろう。
それの証拠に、テントの周りを囲むように乱れた線の円形があった。
丸石や砂利を枝葉で払うかのように延々と一晩中、何かは回っていたのだ。
理解するとソレの思考のおかしさと、訳のわからない何かがいるかもしれない事実に今までにないぐらい鳥肌がたった。
逃げるように道具をまとめると、車に乗り込んで俺は山を後にした。
幸いにして帰りの道でおかしなものに出会うことはなかった。
ただ道中の車の中で、手にある程度の大きさの枝を持てるソレが一晩中なぜテントの周りをまわっていたのか。
俺がもし、テントの外に出ていたらどうなっていたのかを考えるといまだに少し怖さを感じることがある。
山から車で下宿に帰り、アパートの部屋に入る瞬間まで生きた心地はしなかった。
帰った日の夜も何かに襲われるかもしれないと、少し身構えていたが結局ソレと出会うことはなかった。
少しこりたこともあり、ソロキャンプに関してあれから一度も行っていない。
何かが起きたわけじゃないが、なんとなく二度と行かないほうが良い気がしたからだ。
帰ってから別れた彼女ともう一度ひと騒動あった。
その後、いくらかの接近と別れを繰り返した後に、結婚することになったことだけは不幸中の幸いだったように思う。
山からさっさと帰ってよりを戻せと、何かしらの不思議なものからの警告だったのかもしれない。
振り返れば昔はけっこう怖かったこの体験も、少し余裕をもってそう思えるようになっている。
ガチコエー!! 息止めて読んでしまった