ズリズリ、ズリズリ
投稿者:Sennogi (6)
しかもだんだんと近づいてくるような感じなんだ。
頭はパニックになってた。テントの外、出て確かめたいけどできない。
嫌な感じがしたし、万が一クマだったら動いたら一気に襲われそうで怖いし。
他の野生生物で危険なのは間違いない。
きっと頭の中で、どこか外のソレに反応したらよくないって、思ってたんだと思う。
こっちくんな、こっちくんなって心の中で唱えながら聞き耳を立てて過ごす。
山奥に来たのと、LINEとか見たくもなかったのもあって、携帯が圏外の場所選んだから助けも呼べないし。
失恋してキャンプいって野生動物に襲われるとか、ありえないとか変なことばかり考えていた。
さすがにクマではないにしても、キツネや他の野生生物でも素手だと勝つのは怪しい。
しばらくすると、そいつはテントの周りをグルグル回り始めた。
仄かに残った薪の残り火だけがわずかにテントから透けて見える。
ズリズリ、ズリズリ、ズリズリ、ズリズリ。
ソレが残り火に重なると確かに見えなくなるから、何かがいるのは間違いない。
そんな状況が5分ぐらい続いて、何かに狙われてることを確信したところで気が付いた。
俺が今いるのは川の近くの砂利場に近い場所だ。
石や、岩が目立つ場所で小さな丸石も多くある。
なぜジャリといった石のすれる音や、石を踏みしめるような音が聞こえないだろうか。
四足の動物であるなら、実際に地面を動いているなら少なくとも石と足とかすれる音がしないのはおかしくないだろうか。
気づいてからは、心臓の音がバクバクとやまなかった。
ズリズリ、ズリズリ。
緩急をつけながら、何かをうかがう様にそれは移動を続けている。
ただ俺はその動きを目ではなく耳で追うだけだった。
どれだけ時間がたったかわからない。
気を失う様に、ずっと続いた緊張の中で膝を抱えるようにしていつの間にか俺は寝ていたらしい。
朝日が昇り、テントから差し込んでくる辺りで俺は目を覚ました。
耳を澄ますと水の流れる音と、枝葉が風に擦れる音がしていた。
こんなに音があふれていたのに、昨日はズリズリ、ズリズリという音しか聞こえなかった。
ぬぐい切れない気持ち悪さの中で、まだどこかに昨日のソレがいるような恐怖感も手伝って俺は荷物をまとめて帰ろうと決心した。
テントから出て、俺は固まった。
周囲には散らばった木の葉と、なぜかばらばらにおかれた生木の折れた枝がテントの周りに点在していた。
ガチコエー!! 息止めて読んでしまった