本当は怖い「かくれんぼ」
投稿者:ぴ (414)
その日私は祖父母の家でかくれんぼをしていました。祖父母の家は昔ながらの古い家で、本宅と隠居があり、ビオトープみたいな植物を植えた場所やさらに物置部屋や蔵なんてところもあって隠れるところがたくさんありました。そこで近所の子たちと一緒にかくれんぼをしたのです。
私は他の子たちより少しですが年上だったので場を仕切っていました。さらに隠れるのは結構得意でその日もこだわった場所に隠れようとしたのです。私が選んだ場所は物置の中のかなり寂れた棚の中でした。多分普通の子なら隠れるスペースがあっても隠れない場所だと思います。中に入ると狭いし暗いし、錆びたにおいがして居心地が悪いからです。でも私は隠れるのに夢中だったので、そこに身を潜めてしまったんです。
かくれんぼが始まって数十分経ったのですが、鬼はぜんぜんこちらにやってきません。最初はうまく隠れられたと喜んでいた私ですが、次第にちょっとずつ怖くなってきました。薄暗い物置部屋に隠れているだけでも結構勇気がいることで、しかもその中の狭い棚の中。しかもあたりはシーンとして人の気配がぜんぜんないのです。その内早く見つけてほしいと思うようになってきました。
そんなときでしょうか。急に隣に人の気配を感じてぎくっとしました。今まで一人で隠れていたはずなのに、隣で「はーはー」と荒い息遣いが聞こえて私はびくっとしたのです。え?と思いました。私が隠れた錆びた棚は小さくて、私一人が入るのがやっとくらいでした。私以外に入れるスペースはなかったはず。それなのに急に人の気配があるなんて、そんなのありえないことなのです。
私はあまりの事態に身動きが取れず、半泣きになりながら身を潜めました。隣から荒い息遣いのようなものを感じて、ぞぞぞっと体に鳥肌が立ちました。逃げたかったですが逃げられなかったです。ちょっとでも身動きすれば隣に潜んでいる人に見つかると思って私は金縛りみたいに体が硬くなって身動きできませんでした。
物置の出入り口の戸が開いたのはその状態でしばらくしてからです。ぱたぱたと足音がして、私が隠れた棚を開けて「見~つけ!」と明るい声で言ってくれたのはよく見知った近所の年下の女の子で、私はそこでポロポロ泣いてしまいました。泣きながらおそるおそる隣を見たけれどやはり私が入っていた棚には私以外は入れるスペースがなく、隣に人がいるはずもありません。
恥ずかしいですが年下相手にピーピー泣いて、その日はかくれんぼどころではなくなりました。かくれんぼって怖いんです!隠れている間に私のように恐怖の体験をした人ってほかにいないのでしょうか?隣にいた息遣いは今もすごくリアルに思い出せて、一体なんだったのかと恐怖で身がこわばります。
その日以来私はかくれんぼで本気で隠れることをやめました。
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