公園とトイレと鏡
投稿者:ねこきち (21)
Aはトイレに入ったことだけでなく、公園に来たことも後悔しはじめました。一刻も早くこの場を離れたいと思い出口へ足を向けたとき、洗面所に目がいきました。
そこには薄汚れた洗面ボウルと蛇口があるだけでした。
(鏡がない)
Aはそう思いつつも、全速力でバイクへ戻り、その日はそのまま帰宅したのだそうです。
以上の話を、私が怪談や怪奇好きであることを知っていたAは、電話で詳細に伝えてくれました。
私は当初、まぁ不思議な話だな、程度に思っていました。
Aはそんな私の反応を見て、今度一緒にその公園に行こう、あのトイレに行けば怖さがわかるからと言い、詳細な場所までメールで教えてくれました。
しかしその後、Aと連絡が取れなくなってしまいました。
Aへメールや電話をしても音沙汰は無く、趣味の集まりにも顔は出さなくなり、Aと私共通の友人たちも、Aと連絡が取れない、Aが住んでいたアパートも空家になっていて、行方が分からないと心配しました。
私は、Aの教えてくれた例の公園に行ってみようと思いました。
何の確証もありませんでしたが、なんとなく、公園のトイレの話とAの失踪は関係があるように思えたのです。
流石にAから上記の話を聞いた後で夜に行くのは怖かったので、休日の昼間に行ってみました。
件の場所の近辺は、国道沿いの民家も疎らな淋しいところでした。
後で知ったのですが、その辺りはバブル崩壊後の影響で再開発の予定が白紙になり、空き地だらけとなった過疎地だったそうです。
そしてAのメールに書かれた公園のあるはずの場所は、私の背丈よりも高いセイタカアワダチソウがびっしり生えた空き地で、四方をロープで囲まれていました。
周囲を探しましたが、トイレはおろか、公園すら見当たりませんでした。
Aの行方は今でも、わかっていません。
めちゃくちゃ怖い
行ったから死ぬのではなく
もうすぐ死ぬ人だけが行ける場所って類いの気がするね。
部屋とYシャツと私
怖い