天を見上げながら手を合わせるおばあさん
投稿者:候 (9)
この話は僕が3年前に実際に体験した話です。
大阪にある介護施設で働いていた時の話ですが、介護施設で働き始めてもうすぐ半年が経とうとして、少し仕事にも慣れていた頃でした。
私が働いていた介護施設は、有料老人ホームと言って自立した入居者の方もいらっしゃいました。
ある日、新しい入居者の方が施設に来られ、入居の準備を担当することになりました。
杖もつかずキビキビと歩いているどこにでもいるおばあさんです。
荷物などのチェックをしていると、そのおばあさんがしきりに天を見上げ、ため息を付いていました。
私は、「新しい環境になってストレス感じているのかな」くらいにしか思っていませんでした。
その日の夕方。いつものように夕食までの間に記録を済ませようと事務所でパソコンを触っていると、ある入居者が「ちょっと!何しているの!そこおりなさい!」と大声で怒鳴っているのが聞こえました。
急いで声のする方へ駆けつけると、新しく入居してきたおばあさんがテーブルの上で正座し天を見上げながら、手を合わせ祈っていたのです。
私は、おばあさんをテーブルから下ろして危険なので辞めるように伝えました。
おばあさんは何も言わず、自分のお部屋へ帰っていきました。
正直、「変なおばあさんが入居してきたなあ」と、この先が思いやられる気持ちでその日の勤務は終わり帰宅しました。
次の日も仕事だったので出勤すると、上の階の職員たちが慌ただしくしていました。
私は4階の勤務だったので5階で何かあったのかを聞くと、「5階の〇〇さんが今朝亡くなった」と聞かされました。
私はゾッとしました。その5階の〇〇さんのお部屋ですが、昨日新しく入居されたおばあさんがテーブルの上で正座し天を見上げ手を合わせ祈っていたお部屋だったのです。
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