お墓参りの雨宿りで出会った山の獣の主
投稿者:ぴ (414)
私は小さい頃に少し不思議な経験をしたことがあります。
あれは小学生くらいの頃だったでしょうか。おじいちゃんとおばあちゃんに連れられて山の上のお墓参りにいったときのことです。
お墓参りをするのに長い階段を登らないといけないのですが、途中で小雨が降ってきたんですね。足元が悪いところで滑りやすかったこともあり、おそらく心配したんでしょう。二人は階段の下で私を待たせて、お墓参りに行ってしまったのです。私は二人が戻ってくるまで階段の下で帰りを待つことにしました。
ぽつぽつ雨からザーッと激しい雨が降ってきたので、私は持たされた傘をさしてその場にじっとしゃがみこんでいました。
暇つぶしに落ちている枯れ葉で遊んでいたら、雨の音に紛れて「ズリズリズリ」と何かを引きずるような音がしたんです。音が気になって顔を上げたら、目の前に雨で塗れた毛を重そうに引きずる真っ白のたぬきみたいな動物がいました。私は驚いて言葉もなく、その動物としばらく目を合わせていたんです。
そしてしばらく目を合わせた後で雨がよほど嫌だったのか、そのたぬきもどきは私が何も言ってないのに関わらず、図々しくも私の傘の下に入ってきたんです。酷く濡れて毛がぐちゃぐちゃなのを気にしてか、その獣は私の隣でずっと自分の毛を毛繕いしていました。
私は警戒心が少し強い子供だったので、とにかく隣にいる獣が気になりながらも、何もせずにただ雨避けの傘をひたすらさしてあげていました。
こうして時間だけが経ち、雨が大分収まってきたと思ったら、そのたぬきもどきはこちらを一回見上げて、ぺこりとまるで「雨宿りありがとう」とお礼をするように頭を下げて、藪の方へと消えていきました。
今でもあの獣は一体なんだったのかと不思議に思います。
おじいちゃんに聞いたところ、あの山には獣の主が住んでいると言われているらしく、もしかしたらその主だったのかもしれません。
大人になった今でもあの姿の動物には出会ったことがなく、とても不思議で強烈に印象深い出来事でした。
この話、抜群に気に入りました。怖いやらほっこりするやら、悠く儚い記憶に日本の里山の懐かしさを感じる。