カセットテープに録音した悲鳴
投稿者:皐月 (31)
これは私がまだ高校生の頃の話です。その頃は今のようにスマホで簡単に録音できたわけではなく、録音したい時にはカセットデッキを準備していました。
そんな時、友人の1人がアイドル志望で、大手事務所に売り込みたいと言い出したんです。
周囲は大反対したのですが、本人は至って真剣で、私たちは仕方なく付き合うことにしました。
ギターを弾ける友人が演奏をして、友人が唄い出しました。可でも不可でもない友人の歌声に、私たちはオーディションは無理だろうと思ったんです。
すると、いきなり「ぎゃあああああっ」という声が外からしました。みんな、一瞬止まってしまいました。ただ、テープの回る音だけがしていたんです。
「何、今の声」
「悲鳴?」
「誰かいるのかな?」
私たちは、恐る恐る外を見ました。農家をしている友人の家は、周囲に家がなく、隣家に行くだけでも約15分はかかります。
「誰もいないよ」
「でも、確かに声がしたよね」
男か女かもわからない声でしたが、確かに悲鳴でした。もし、近くに誰かいたとしたら、見つけられないわけはないのです。
「ねぇ。テープにとってあるよね」
「あ、そうだった」
私たちは、もう一度カセットテープを聞けばわかると思い、巻き戻して聞いてみました。
友人の歌声が聞こえてきて、そろそろと思ったら、そこでカセットテープがなぜか空回りを起こすんです。
飛び出してきたテープを元に戻して、再び再生すると、やはりそこでテープは空回りしてしまいます。そして、最終的には友人の歌声さえ砂嵐のような音となって聞こえなくなりました。
あの悲鳴のような声は一体なんだったのか、誰の声だったのか、結局わかりませんでした。
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