工場には出ない
投稿者:GENGO (32)
趣味を通じて知り合ったAから聞いた話。
Aが新卒で採用された会社は、そこそこ大きな会社だった。
本社勤務で入社したAだったが、入社直後に新人研修として一週間、
地方の工場に行くことになった。
一応はAの会社とは別企業だが、同じグループ内の
協力会社という関係の工場へ。
その研修に行くことが決定した時、Aは気乗りがしなかった。
まず、その工場がかなりの遠方のいわゆる僻地にあるから。
だがまだこれは、行って見なければわからない面はある。
もう一つの気乗りしない理由は、その工場には幽霊が出るという噂を
先輩社員から聞かされたから。
Aは幽霊の存在を信じてはおらず、なのでさほど怖いとは思わなかった。
だが幽霊が実際に出るかどうか以前に、幽霊が出るなどと噂のあるところなど
古臭くて汚い工場なのだろうというイメージしかわかない。
はるかかなたの僻地にある汚いであろう工場。
そこに行けといわれて気分が良いハズもない。
しかもこの研修期間中、Aは工場内の宿泊室にて
寝起きすることになるというのだ。
Aは憂鬱な気分で現地へと向かった。
工場の最寄駅で、研修中の指導担当者となる
K専務に出迎えてもらい、K専務の車で工場へ向かった。
到着してみると工場も宿泊室も予想より遥かに綺麗だった。
工場は海に面した工業団地の中の一角にあった。
工業団地そのものが以前は防風林の松林だったそうで、
数年前に防風林の半分程度を伐採し整地し、
造成して出来たもので、全体的に新しいのだという。
工場内の設備も綺麗、肝心の宿泊室も行き届いていて、
さほど広くはないがテレビやベッドなども整っていた。
社員食堂やシャワー室が隣接しているが、煩いということもない。
社食は調理人が昼しかいないので、朝食夕食はは特別に
作り置きして貰った品を食べるしかなかったが、海の近くだからだろうか、
海産物中心の料理は冷めていても十分に美味しかった。
食事や寝起きの都合に関しては、都会の日常よりむしろ快適な程だった。
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