昨夜、遅くまで起きていたにもかかわらず、子供たちは午前八時から九時頃には起きてきたそうです。
軽い朝食を済ませ、午前十時を過ぎた頃。
そろそろ帰ろうか、という話になりました。
荷物をまとめ、帰る準備をしていた、そのときです。
「おっ、ちょっと待て」
そんな声が聞こえたそうです。
振り返ると、そこにいたのはA君のお父さんでした。
「お前たち、ちょっと本堂のほうへ来い」
そう言われ、池谷さんたちは、全員で本堂へ向かいました。
本堂に入ると、お父さんは子供たちを一列に並ばせたそうです。
「まあ、楽にしていていいから、そこに座れ」
言われるまま、子供たちは並んで座りました。
すると、お父さんは、その前でお経を唱え始めたそうです。
突然のことに、池谷さんたちは戸惑いました。
いったい、何が始まったのか。
どうして、自分たちはここに座らされているのか。
誰も、その理由が分からなかったそうです。
ただ、子供たちは黙って、お父さんがお経を唱えるのを聞いていました。
しばらくして、お経が終わりました。
すると、お父さんは子供たちの後ろへ回ったそうです。
そして――。
一人ずつ、肩のあたりを、ポン、ポンと叩いていきました。
自分の番が来ると、池谷さんも驚いたそうです。
「……えっ、何?」
思わず、そう尋ねたといいます。
すると、お父さんは、短くこう答えました。
「一応な」
それだけでした。
なぜ、お経を唱えたのか。
なぜ、子供たちを一列に並ばせたのか。
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