「最初は遠かったけど、すぐにどんどん近づいてきた」
いとこの自分を見る目が、七年前のあのときと同じように見えました。
「『かめ、かめ、かめ』って言いながら」
そこで一度、言葉を切りました。
「兄ちゃん、四つん這いで部屋に入ってきたんだよ」
全身に鳥肌が立ちました。
「ものすごい速さで」
僕は、あの日の音を思い出していました。
ドタドタドタドタ。
四本の手足で床を叩くような音。
背後から近づいてきた、あの音。
「俺、本当に怖くて動けなかった。そしたら兄ちゃん、俺の目の前まで来て止まった」
「……俺、何してた?」
いとこは首を振りました。
「分かんない」
そして、
「ずっと下向いてた」
と言いました。
目隠しをしたまま。
四つん這いで。
いとこの目の前にいたらしいです。
「それで急に立ち上がって、目隠し外した」
そこから先は、僕の記憶と一致していました。
目隠しを外した僕。
怯えたようにこちらを見ていたいとこ。
その手を取って、二人でリビングへ向かったこと。
あの日、僕は何かに取り憑かれてしまったのでしょうか。
あのとき僕が聞いていた女の声も。
いとこが見たという四つん這いで部屋に戻ってきた「僕」も。
今でも答えは分かっていません。
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