奇々怪々 お知らせ

不思議体験

キジニャンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

すみません
長編 2026/08/30 14:15 978view

幸いだった。

2時前に、飲料やビールの並んだ冷ケースを敷き詰めるように品出ししていた。

こちらからも、向こうからも、ほとんど完全に視界が遮られている。
視認性のある透明な水のペットボトルは、僕から見て左端のコーナー。

しかし、

ただ一か所。

冷ケース中央の一番下。

500mlのチューハイ、ビールのロング缶のスペースだけが、ちょうど品切れになっていた。

そこから、

手が見えた。

床についた手。

そして、

長い脚。

ゆっくり。

ゆっくり。

こちらへ近づいてくる。

やがて、その手と足が冷ケースの目の前で止まった。

「……すみませーん」

僕は固まっていた。

「……いますかー」

声がする。

僕はふと、視界の端にあるバックヤード内の時計を見た。

2時56分。

まだだ。

3時まで、あと4分。

僕は少しずつ身体を動かした。

飲料売場の裏から離れなければならない。

腰が抜けている。

立てない。

腕しか動かせない。

9/15
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