売場から声がした。
僕は反射的に立ち上がった。
しかし、すぐに足を止めた。
店長の言葉を思い出した。
「2時から3時の間は、必ずバックヤードにいてください」
先輩の言葉も思い出した。
「呼び鈴、鳴った?」
確かに、
呼び鈴は鳴っていない。
そして――
自動ドアが開いたときの音も、
聞こえていなかった。
「……」
僕は、その場で立ち尽くした。
「すみませーん」
もう一度。
誰もいない売場から声がした。
僕は時計を見る。
2時56分。
3時まで、あと4分。
「あと少しだけ我慢すればいい」
そう思った。
でも、仕事をしようとしても集中できない。
「すみませーん」
「いますかー?」
数十秒おきに声がする。
僕はとうとう我慢できなくなった。
ただ、売場へ出ることはしなかった。
事務所には、防犯カメラの映像を中継しているモニターがある。
店の入口。
レジ。
イートインスペース。
各通路。
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